「お天気」に振り回されながらも
社会不安を緩和する1つの方法とは?

 しかし、「国が貧しくなる」程度で済めば、まだ幸運なのかもしれない。

 気候変動そのものは、つい最近始まったわけではない。地球が生まれて以来、氷河期が来たかと思えば温暖な時期が訪れることの繰り返しだった。現在の地球に恐竜がいないのも、過去の気候変動の結果だ。

 現在の「気候変動」、地球規模の気温上昇は、18世紀の産業革命以後の問題だ。特徴は、1700年までの1000年間にはなかった急激さと、人間の活動によって引き起こされていることである。根本的な対策は、人間が行動を変えることしかない。そこで「省エネ」が追求され、燃焼を伴わない(=二酸炭素を排出しない)エネルギーが模索されてきているのだが、行動パターンを変えさせられることは、誰にとっても面白いことではないだろう。

ソロモン・M・シアン氏(カリフォルニア大学バークレー校教授)は、気候変動が人間と社会に与える影響を研究するだけではなく、数多くの政策提言を行い、メディアにも注目されている。気候変動が格差を増大させることを示した2017年の論文は、『The Economist』はじめ、影響力あるメディア多数で紹介された

 カリフォルニア大学バークレー校のソロモン・M・シアン氏らが2013年に発表した論文は、過去の研究60件を比較検討し、紀元前3000年から現在までの約5000年間、いかに人類が気温や雨量に翻弄されてきたかを明らかにしている。

 王朝の滅亡も、戦争も革命も、多くの場合、気候変動に引き続いて起こっている。国家レベルの問題に至らなくても、人と人の間の暴力やグループ間の紛争も、気温や雨量の影響で増えたり減ったりしている。気まぐれな人を「お天気屋」と呼ぶが、「お天気」に翻弄されているのは人間全員なのだ。

 勢いづいている地球温暖化は、様々な対策が実行されているにもかかわらず、簡単には収まりそうにない。放置しておけば地球の陸地の多くが海に沈み、酷暑のため人間が住むことのできない地域が増えていくだけなのだが、個人レベル・地域レベル・国家レベルのいずれにおいても、たやすく実行できることは少ない。

 しかし日本には、確実にできることが1つある。貧困を現在以上に深刻にせず、格差を拡大しないことだ。具体的な方法の1つは、政府が予定している生活保護基準引き下げの中止だ。