不祥事発覚と御家騒動に揺れるオリンパス。だが、逆風の中にあっても、同社の屋台骨を支える内視鏡事業は盤石だ。ライバル他社が歯噛みする強さの秘密を探る。
「オリンパスの製品を使わずに、今までどおりの医療ができないか」
日本を代表する医療機器メーカー、オリンパスの不祥事が発覚してから、一部の医師たちのあいだで、“オリンパスはずし”を検討する動きが出始めた。「公金と関係が深い医療で稼いだカネを、不透明なことに使うとは許せない」と、怒りの声が上がっているのだ。
医療の質を落とさずに、オリンパスの製品を同業他社のものに代替するにはどうすればいいのかといった話が、メールやツイッターなどを通じて議論されているという。なかには代替となりそうな製品をサンプルとして、オリンパス以外のメーカーから取り寄せた医師までいる。
今はまだ表立った動きはないが、富士フイルムやHOYAといった同業他社は当然、シェアを奪うビジネスチャンスだと踏んでいるはず。サンプルを頼んだ医師は「かなり勇んで、すぐに持ってきてくれた」と言うし、別の医師も「以前より頻繁に病院に来るようになった」と明かす。
しかし、結論からいうと“オリンパスはずし”のハードルは非常に高く、現実的ではない。試みた当の医師たちも、そのことを認めざるをえない状況なのだ
2500億円市場で
4分の3の圧倒的シェア
オリンパスが医療機器のなかでも得意としているのは、先端にレンズが付いた管を体内に挿入して観察や治療をする内視鏡だ。
内視鏡には大きく分けて、挿入部分が軟らかく、曲げて使用できる「軟性鏡」と、棒状で硬い「硬性鏡」の2種類がある。軟性鏡は口や鼻などから挿入し、主に消化器系の内臓の観察や治療ができる。一方、硬性鏡は体の一部に小さな穴を開けて挿入するもので、主に外科手術で使用する。
また、内視鏡を使用する際には、使い捨てされることが多い「処置具」という道具が必要になる。代表的なのは、患部を焼き切る「電気メス」などだ。
軟性鏡と硬性鏡、処置具という三つの製品群で主に構成される内視鏡事業の世界市場規模は、多くの関連製品を含めた広義なもので、約2兆円といわれている。そのうち、約2500億円が軟性鏡の市場規模とされており、オリンパスは内視鏡のパイオニアとして、医師たちと二人三脚で優れた機器を世に送り出し、この市場で約4分の3という圧倒的なシェアを持っている(図①)。
そして、これこそが、医師たちの“オリンパスはずし”における最大の壁となっているのだ。