この10年間、一番多くの“正解”を見つけてきたのはアップルだ――。
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米ラスベガスで開かれているCES(国際家電見本市)の「影の主人公」は、故スティーブ・ジョブズが作り上げたアップルに他ならない。携帯音楽プレーヤーのiPod(2001年)、スマートフォンのiPhone(07年)、ノート型パソコンのMacBookAir(08年)、タブレット型端末のiPad(10年)と、新しい商品で世界中を驚かせてきた。アップルが参加しないCESでも、「次の一手は何か」が、数千社に及ぶ参加企業の見えざるテーマとなっている。
「それはリンゴさん(アップル社)の気持ちだから、コメントしようがない」。シャープの片山幹雄社長はCESでのメディア取材で、アップルが開発しているとされるテレビモニター、通称「iTV」の液晶ディスプレイの製造を受注したいか問われて、苦笑いを浮かべた。会場にはマイクロソフト社と提携する電子黒板が飾られていたが、質問はアップルに集中した。
実際に、複数の部材関係者などによると、サムスンやLG、シャープなどの液晶パネルメーカーは、最新技術を使ったディスプレイをサンプルとして提供済みだ。アップルのiTVに採用してもらえれば、莫大な規模の受注が期待できる。そのため今回のレポートでも取り上げた、サムスンやLGの極薄の有機ELテレビ(55インチ型)も「1年以上前にアップルに渡っている」(業界関係者)という。
いずれアップルのiTVという「黒船」が現れる。アップル製品の製造を請け負うか、正面からテレビビジネスで戦うか、別のコンセプトを打ち出すのか。日韓の大手メーカーは、その日を想像しながら、新型テレビの「正解」を模索している。
過去にアップルに追随して、痛い目に遭っている商品もある。それはiPadの発売を受け、各社が追随したタブレット型端末だ。昨年のCESの目玉商品にもかかわらず、大手メーカーは軒並み苦戦し、米ヒューレットパッカードは早々に撤退を発表して、米国の大手量販店では同社製品が99ドルで投げ売りされた。
それ故に、MacBookAirの対抗軸として、インテル主導の極薄のノート型パソコン「ウルトラブック」が成功するかに注目が集まる。