相手への期待を手放したら
相手の行動も変わった

数年来、断捨離を実践し続け、「ココロの解放感を味わっている」と語る美香さん(仮名)ですが、コレクター体質の夫が悩みの種でした。

断捨離が、いかに面白くて有意義な片づけメソッドであるかをたびたび話すものの、夫は関心を示しません。

美香さんの夫は、コレクションが趣味で、書斎だけでは足らず、レンタル倉庫を借りてまで、モノを買い続けています。

集めているのは……真空管ラジオ17台、絵画20点、化石、隕石、コインを衣装ケース(大)1箱分、クラシックCDと本の全集セット100冊、その他蔵書300冊。

一番驚いたのは、倉庫にあった未開封の段ボール2箱の中身。

恐る恐る開けると、ネットオークションで買った「縄文土器」のかけらが山ほど詰まっていました!

このままでは家が魔窟になってしまう、と危機感を持った美香さんですが、夫はまったく聞く耳を貸さず。

むしろ、ますます意固地になっていくばかり。

そんなある日、出勤する夫の後ろ姿を見ると、背中が小さくなったように感じて……。

職場での責任が大きくなるのに比例して、疲れた表情も多くなった感があります。

「夫は、今の住まいに心地よさを感じているのだろうか?」と、改めて夫の書斎を覗くと、モノで溢れたカオス状態で床すら見えません。

翌日、美香さんは夫にお願いをしました。

「あなたの部屋を私の手でステキな書斎に生まれ変わらせてください」

そして「捨てて」とは言わずに、「モノを一時保管スペースに置かせてほしい」と。

そこで美香さんはまず、趣味のモノを分別。

一番好きな真空管ラジオを壁面収納で素敵にディスプレーして、化石や隕石は月ごとに玄関に展示することに。

夫は、自分のコレクションが、玄関に飾られていることに大喜び。

しかも、飾りきれないモノを丁寧に保管する妻の姿を見て、「手放さない」の一点張りだった夫が「これほどの量はいらないよ」と言い出したそうです。

結果、貴重な化石や真空管ラジオを郷土博物館に寄贈し、かなりの量を減らすことができました。

まるで北風と太陽のような話です。美香さんは無理やり処分するのではなく、夫に空間の心地よさを知ってほしかったのです。

ただ、1つ約束したのは、1年後に保管スペースに置いたモノを確認すること。

その上で、1度も開封してないモノについては、今後どうするかを、2人で話し合うことにしたそうです。

最近は、以前ほどモノを買わなくなった夫ですが、同時に、この方法を通して、美香さん自身も「片づけさせたい」気持ちから、離れることができたのです。