時代は単機能ロボットに

中嶋秀朗(なかじま しゅうろう)
日本ロボット学会理事、和歌山大学システム工学部システム工学科教授。1973年生まれ。東北大学大学院情報科学研究科応用情報科学専攻修了。2007年より千葉工業大学工学部未来ロボティクス学科准教授(2013-14年、カリフォルニア大学バークレー校 客員研究員)を経て現職。専門は知能機械学・機械システム(ロボティクス、メカトロニクス)、知能ロボティクス(知能ロボット、応用情報技術論)。2016年、スイスで第1回が行われた義手、義足などを使ったオリンピックである「サイバスロン2016」に「パワード車いす部門(Powered wheelchair)」で出場、世界4位。電気学会より第73回電気学術振興賞進歩賞(2017年)、在日ドイツ商工会議所よりGerman Innovation Award - Gottfried Wagener Prize(2017年)、2017年度日本機械学会関西支部賞(研究賞)、共著に『はじめてのメカトロニクス実践設計』(講談社)がある。

中嶋:このように期待値調整に失敗し続けてきたからこそ、多くの研究者が「ロボットのできることをちゃんと見つけよう」と考えるようになっています。期待に答えて「なんでもできるロボット」「人型のロボット」と夢ばかり追うのではなく、「ニーズ」に見合ったロボットです。そういったロボットが活躍し始めたのが、ここ数年の傾向です。

長谷川:ニーズに合わせたロボットには、どのようなものがあるのでしょうか?

中嶋:ルンバやドローンなどがそうです。「なんでもできるけど複雑で動かない」ロボットではなく、「単機能しかないけどタフで確実に動く」という方向へシフトしています。これは、2011年に起きた東日本大震災も影響しています。原発事故にすぐに投入できるロボットがなかったという反省から、目的を明確化した、シンプルでタフなロボットが注目をあびるようになりました。

長谷川:テクノロジーはどんどん進化していきますが、先生がおっしゃったように、ある意味今の限界に謙虚になって、それに見合ったものを設計するのは重要ですね。例えば1980年代にインターネットの事業をやり始めた会社もありましたが、インフラが今ほど整っていませんでしたから、かなり厳しかった。10年早かったのです。あの時代に普及したのは「ポケベル」でしたから。技術的な力量とコストのバランスも大切です。

もしかするとスティーブ・ジョブズは、今のVR(バーチャル・リアリティ)の発想などを持っていたかもしれませんが、まだ一般的に普及するところまではいかないから、iPhoneが持つレベルに調節をしたのかもしれません。

中嶋:機能を絞ればコストも絞れます。ルンバなどは、機能とコストが見合った好例です。なんでもできるロボットを安価で作るためには、まだまだ技術面においてもジャンプが必要ですが、何か一つのことを任せるだけの力を、すでにロボットは持っています。

サービス分野においてロボットビジネスが成り立つかどうかは、使う側が、今ロボットに任せたい仕事を明確にすることが大切になってくるでしょう。

長谷川:まるっと任せられるものがあれば、それはそれで任せればいいし、部分的になら任せられるという現実なら、そういう役割分担でやっていく。けっこうシンプルな話かもしれませんね。使える余地はいっぱいありそうです。