ロボティクスの専門家である著者:中嶋秀朗氏と、「LITALICOワンダー」という子ども向けのロボット、プログラミング教室などを運営している、LITALICO代表取締役社長の長谷川 敦弥氏。それぞれ、現在、どのようにロボットとのかかわりを持っているのか、対談をしてもらった(全4回)
取材・文/黒坂真由子、写真/宇佐見利明

期待が仇となったロボットの歴史

中嶋:ロボットって、これまでも何度か盛り上がったのですが、最終的に「がっかり」されてブームが終了ということが続きました。

長谷川:そうですね。「あれ、こんなこともできないの?」と、当初の期待に応えられなかったんですよね。

中嶋:はい、特にロボットが人の形をしていると、比較対象が「人」になってしまうため、「なんでもできるのではないか」と思われてしまうからです。

長谷川:つまり今までは「期待値」の調整に失敗してきたというのが実際のところではないでしょうか。身近でロボットに接していないと、今のロボットが何ができて何ができないのかがわかりませんから、「ここまでできるのではないか」と高い期待をしてしまいます。そしてそれができなくて、がっかりということを繰り返してきたように思えます。

中嶋:例えば、製品の記者発表やネットで紹介される人型のロボットは、その直前までエンジニア達がしっかり調整を行なっています。それこそ、ロボット自体のメンテナンスだけでなく、段差がないか、滑るところがないかといった環境のチェックまで。
ですから、そういった場では、ロボットはスムーズに動き、なんでもできそうに見えます。しかし、現実の世界では数名の技術者をロボット1台に貼り付けておくわけにはいきませんから。

長谷川:「Pepper(ペッパー)」もそうですよね。Pepperはとにかく大きさが人間っぽいので、「ドラえもんくらいのことはできるのでは!?」という気持ちにさせられました。大きいから、その期待値も大きくなってしまったのではないでしょうか。
もしPepperがもっとずっと小さかったら、そこまで期待しなかったと思います。サイズの問題は大きいはずです。その役割や能力にあったデザインやマーケティングをしていくというのは、ロボットに限らずビジネスとして大事ですね。そういった意味で「パロ」(写真)は、いい商品ですね。

長谷川 敦弥(はせがわ・あつみ)
1985年生まれ。2008年名古屋大学理学部数理学科卒業。2009年8月に株式会社LITALICO(リタリコ)代表取締役社長に就任。「障害のない社会をつくる」というビジョンを掲げ、障害のある方に向けた就労支援サービスを全国66ヵ所、発達障害のある子どもを中心とした教育サービスを全国98教室、小中学生にプログラミングを教える「IT×ものづくり」教室(9拠点)などを展開。2017年3月、東証一部に上場。企業理念は「世界を変え、社員を幸せに」。

中嶋:アザラシ型ロボットですね。「世界一癒し効果がある」コミュニケーションロボットとして2002年にはギネス世界記録に登録されました。

長谷川:パロは期待値調整がうまい。アザラシだから、こちら側もたいして期待をしないですからね(笑)。「しゃべる」とか「手伝ってくれる」とか。ぬいぐるみに見えますから、期待値がぬいぐるみほどに下がるのです。

でも、パロは、さわると鳴き方が変わったり、どんどん学習してオリジナルの動きをしたりするようになる。期待値を超えると、私たちはその商品に価値を感じますよね。

中嶋:実際に、アザラシにしたのは「比較しようがないから」というのが理由だそうです。犬型や猫型だと、まわりの犬や猫と比べてしまいますから、そこで期待値も上がってしまいますからね。人型だと人と、犬型だと犬と、猫型だと猫と無意識のうちに比較してしまうのです。