さらに国民経済発展計画報告では、消費のグレードアップや自動車消費の促進、観光・レジャーのグレードアップ、教育・文化・情報関連消費の革新などを盛り込んだ「十大消費拡大行動」の実施や、人々の幸福感につながる観光やスポーツ消費、健康増進、養老など「幸福産業」の質・内容の向上についても言及している。

 こうした取り組みの重要な担い手となるのは民間企業だ。だが、中国には、表向きは参入規制が撤廃されているものの、実際はまだ存在するという「ガラスドア」や、参入したとしても不条理な政策などにより、撤退を余儀なくされるという「バネ付きドア」、表向きは国有企業と同等の待遇を受けることになっているが、実際は国有企業に有利な措置が設けられているという「回転ドア」といった“障壁”があり、民間の力を活用するという政府の掛け声とは裏腹に、民間企業にとってはまだ厳しい市場環境である。

 こうした問題がある限り、中国政府が掲げる「統一的で開放され、競争と秩序のある市場体系」という目標は達成が難しいだろう。

「人民の獲得感」が重要と考え
人々に寄り添った政策を打ち出す

「人民の獲得感」は、第19回党大会のキーワードの一つであり、習がよく言っている「中国共産党の初心」を体現するものでもある。中でも、さまざまな分野の政策措置を提起している「報告」の中で、日本を含む外国がよく注目するのは国防政策である。それは、中国を「社会主義現代化強国」にするための戦略の一環であり、中国政府が基礎においているのはやはり「人民を中心とする」考えだ。

 先に挙げた「報告」の取り組みの中で、人々の獲得感に直接つながるのは、民生の保障と改善だ。「民生の最低ラインを断固として守り、人民大衆の獲得感・幸福感・安心感」を不断に高めていくとして、就業・起業を促進するための措置、農民工の雇用拡大及び、賃金未払い問題の解決、社会の最低賃金基準の調整、農村の児童・生徒の中途退学率の引き下げ、都市部の「大班額(すし詰め教室)」の解消、授業以外の負担が過重な問題の解決、「健康中国」戦略の実施、食品や医薬品の安全確保、大衆の住宅問題の解決などの措置を挙げている。

 ここに挙げられた措置は、以前から言われているものもあるが、メディアで注目された問題もある。

 例えば、小・中学生の授業以外の負担については、宿題が多すぎること、塾で長時間の勉強が求められることなどが報道された。また、ここでは挙げなかったが、窃盗や強盗、詐欺などの違法犯罪行為の取り締まりも「報告」に述べられており、特に詐欺はここ数年来メディアに注目されている。