ファシリテーターたるもの、参加者がつくったグランドルールをしっかり頭に入れておいて、うまく活用したいものですが、ファシリテーターがグランドルールを忘れて議論に夢中になっているのをときどき見かけます。注意したいものです。

 さて、いろいろな場でファシリテーションを利用してきた私の経験から言うと、グランドルールには同じようなものが多く、次の7つで90パーセント程度をカバーすることができるように思います。

・否定しない(よく聴く)
・全員参加(必ず話す)
・楽しく(笑う)
・忖度しない(遠慮しない、言うべきことを言う)
・ほかの人のアイデアに乗っかる
・プラス思考(未来志向)
・「難しい」「できない」と言わない

 見方を変えれば、この7項目の逆(たとえば「すぐ否定される」「遠慮しろ」)が「空気」と言われるものの正体と言えるでしょう。

 もし何らかの理由で参加者がグランドルールをつくれないようであれば(たとえば100人を超えるような大きな集まり)、この中から3つ選んでたたき台として利用するのも一つの方法です。

 ファシリテーターがグランドルールを指定する場合には、「それは、あなたがつくったルールだ」と参加者から言われないように、しっかりと参加者の了解をとってから議論を始めることが重要であることは言うまでもありません。

■「話す前に」書くアプローチはこんなに役立つ

『ストーリーでわかるファシリテーター入門』には、付箋を使っていったん意見やアイデアを書いてから議論をするという場面がくり返し出てきました。これは一見手間なようですが、想像以上に全員の意見を引きだすのに有効で、実は私もよく使います。

 たとえば、先日ある大学で講義を行ったときのことです。受講生が40人ほどいたので、質疑の時間に、手を挙げるのではなく、まず付箋に質問を書いて壁に貼ってもらいました。主人公のマリコがやったように「同じものは縦に、違うものは横に」というルールで、書いた人たち自身の手で付箋を整理してもらいます。

 すると横に20枚ほどの付箋が並び、縦には多いところで10枚以上の質問が並びました。つまり20種類ほどの異なる質問があり、その中には10人以上が同じ疑問を感じているものがあるということです。1枚しか付箋のないユニークな質問も数件ありました。このようにいったん書きだしてもらうと、視覚的にどんなことに関心の高いグループなのか、どれぐらい広がりがあるのかなどが、一目でわかります。

 時間内にすべての質問に答えられるかどうかわからなかったので、参加者の了解をとって縦の枚数が多いものから順に回答していきました。そして、あと5分程で時間切れというところで1枚しかない数項目に来ました。このすべてに答える時間はなかったので、「これは答えてほしい!というものがあれば?」と問いかけたのですが、そこは控えめな日本人、誰も手を挙げません。適当に2つ選んで回答して終えたところ、残った質問については講義のあとで質問に来られ、すべての疑問にお答えすることができました。