ミクロネシアのライ(石貨)と
仮想通貨の3つの共通点

 では、ライの3つの特性を紹介します。

(1)ライ自体は一切移動していない
(2)ライの慣習に政府や行政が一切関与していない
(3)ライは誰もが見ることのできる「公開台帳」である

 そして、仮想通貨も言うなればこのライと同じなのです。
 では、1つずつ見ていきましょう。

(1)仮想通貨は、「ブロックチェーン」と呼ばれるすべての取引が記録されたコンピュータ上のデータ(ブロック)が鎖状につながったもの(チェーン)なので、そもそも実物がなく、一万円札を財布に入れて持ち運ぶという慣習とは根本的に違う

(2)仮想通貨を「信じる者」が仮想通貨に価値を与え、「信じる者」だけが使えばいいので、円やドルといった法定通貨とは違って、そこには政府も行政も一切介入しない

(3)仮想通貨は言うなれば、全世界の人が「同じ公開台帳」を持っているようなもの。すなわち、ある人が仮想通貨で売買をしたと公開台帳に書けば、それは瞬時に全世界の人の公開台帳にも記録される。このように、公開台帳を全世界の人が閲覧、監視、管理し合う仕組みを技術的に実現しているのがブロックチェーンであり、仮想通貨である

 ちなみに、(2)の政府も行政も一切介入しない特性を、「非中央集権型」もしくは「トラストレス」と呼びますが、仮想通貨に懐疑的な人は、恐らくこの「発行主体がない」ことに疑念を抱いているのだと思います。

 実際に、どれほど仮想通貨が普及しても、日銀や政府が「円」の発行をやめることはありえません。もしかしたら、ブロックチェーン技術を使った「デジタル円」を発行するかもしれません。

 しかし、繰り返しになりますが、仮想通貨は使いたい人が使えばいいのです。
仮に、Amazonで、ビットコインで決済ができるようになったら、ビットコインで買い物をしたい人だけが決済手段としてビットコインを使えばいいということです。

 もちろん、実体経済と連動する仮想通貨がビットコインになるとは限りません。
 むしろ、私は、ビットコインは実需通貨、すなわち「使用する通貨」ではなく、金(きん)のように「価値を保存しておく通貨」になると思っています。
ただし、その理由については、ここでは割愛させていただきます。

 いずれにしても、今この瞬間も仮想通貨を自社サービスに取り入れようと、世界中の企業がコップに水を汲んでいるのです。
 そして、そう遠くない将来、コップから水があふれる日、言い換えれば、仮想通貨というイノベーションによってパラダイムシフトが起きる日が確実に来ると私は確信しています。