ギリシャの民間債権者との債務減免交渉問題は、債務交換プログラム参加を強制する「集団行動条項」(CAC)発動で決着した。これにより参加率は目標の90%を超え、ユーロ圏は3月12日、同国への第2次支援を承認した。
一方、国際スワップデリバティブ協会(ISDA)は、CAC発動を、事実上のデフォルト(債務不履行)と認定。クレジット・デフォルト・スワップ(CDS。債務不履行の場合の元本支払いを保証する金融派生商品)の損失補償支払いを決めた。市場はこれらを織り込み済みで、懸念された混乱は起きなかった。しかし、問題が解決したわけではない。
まず、ギリシャの財政再建が計画通り進むとは限らない。そして「危機の封じ込めにも成功していない」(中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長)。安全網であるEFSF(欧州金融安定基金)は規模が不十分で、7月に発足予定のESM(欧州安定メカニズム)も議論が遅れているからだ。
今回、ギリシャ政府のCAC発動を欧州当局が容認したことは、将来への禍根を残すことになる。「国債の保有者は、他国でも同様のことが起きるリスクを考えざるを得ない」(藤岡宏明・大和証券キャピタル・マーケッツ金融市場調査部副部長)からだ。
ギリシャ政府はすでに発行済みの国債に対し、“後付け”で法律を作り、強制的な債務交換を断行した。最悪の事態は回避されたが、同時に「パンドラの箱」を開けてしまったのだ。
足元では、ポルトガルやスペインへの不安が再燃し、国債利回りが高止まりしている。欧州危機は新たな火種を抱え込んだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)