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アナリティクスからAIへの進化で
ビジネスはどう変わるのか

――SASインスティテュート年次イベント・現地報告

末岡洋子
【第172回】 2018年4月25日
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AIはブラックボックスではいけない

 SASのCOO兼CTOのシャーベンバーガー氏は事例や機能を紹介するたびに、「AIは我々の生活を豊かにする」と強調する。「中心にあるのは好奇心。それを原動力に、機械学習、コンピュータビジョン、アナリティクスなどを使ってスポーツ、医療、カスタマージャーニーなどさまざまな分野に当てはめると、素晴らしいことが起こる」とシャーベンバーガー氏は言う。「デジタル化とビジュアル化がアナリティクスエコノミーをもたらす」と続ける。

 実際、消費者もAIを受け入れる方向にあるようだ。米国の消費者を対象としたSASの調査によると、47%がビジネス上の取引で企業がAIを使うことを受け入れるとした。具体的には、医療、銀行、小売の3種について聞いたが、最も受け入れが高かった医療では、61%が医師がFitBitやApple Watchなどウェアラブル端末からのデータを利用することを厭わない、とした。ついで銀行、小売が続く。SASでAIプロダクトマーケティングマネージャーを務めるディヴィッド・タレーン(David Tareen)氏は、「コンシューマーは人の介入がないという点を最も懸念している」と述べた。

 AIで必ず持ち上がる懸念が雇用だが、シャーベンバーガー氏はあくまでも「(AIは)人間を支援する技術」と述べる。過去の産業革命でも労働がシフトしたことに触れながら、「人間が機械に置き換わってしまう、追いやられてしまうと恐れてはいない」と述べた。

AIを無条件に信じることはできない

SAS InstituteのCMO
Randy Guard氏

 雇用に加えて、新しい懸念として偏りのあるデータが生む「バイアスAI」の問題だ。SASのCMO、ランディ・ガード(Randy Guard)氏は、「モデルに与えるデータに偏りがあれば、偏見が内在する。モデルが“データに偏りがある”と言うことはできないのだから」と偏見が入る可能性があることを認める。米国のデータだけを入れた場合、日本、中国、欧州など他の地域のデータも入れた場合と違う結果が出ることは、想像できる。だが「“AIが割り出した”というと盲目的に信じてしまう可能性がある」とSASジャパンで代表取締役社長の堀田徹哉氏も言う。

 誤差が許されないはずの医薬品業界では、ディオバン、子宮頸がんワクチンなど論文の改ざんが発覚され話題となった。堀田氏は、ある製薬会社が効果を示す臨床試験データをWebで公開していることに触れながら、「自分が求める結果が得られるようにデータを改ざんするということが起こった。それを防ぐためには、データと結果を公表するしかない。SASは製薬会社に対して、自分たちが臨床試験でやったデータ、当局に提出したデータなど、データをオープンにするというシステムを提供している」と述べた。

 「企業は透明性が問われる。どのモデルを使ったのか、モデルのリポジトリを作り、いつでも立ち戻ることができるようにしておく必要がある」とガード氏。シャーベンバーガー氏は、「どのように機能しているのか、どうやって決定したのかを説明できないAIシステムは、信頼できない」と述べ、責任可能なアルゴリズムの原則を設定する「FAT(Fairness、Accountable and Transparency)in Machine Learning」などの動きがあることを紹介した。この分野の議論は今後も進む、とSASは見ている。

(取材・文・撮影/末岡洋子)

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末岡洋子

すえおか・ようこ/フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている。

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