4月28日(土)に「世界一受けたい授業」(日本テレビ)に出演するなど、テレビ番組からの出演依頼が続き、その活躍に注目が集まるデザインオフィスnendo・佐藤オオキさん。そんな彼が今月、初めての絵本『コップってなんだっけ?』を発売し、ファンを驚かせました。ルイ・ヴィトン、エルメスといったヨーロッパの名門ブランドをはじめ、名だたるプロジェクトを世界中で手掛けるデザイナーの佐藤オオキさんが、なぜいま「絵本」を描いたのでしょうか。
いま、世界がもっとも仕事をしたがるデザイナー・佐藤オオキ
デザインオフィスnendoを率いる佐藤オオキさんは、デザイン界の最高の栄誉といわれるELLE DÉCORのグランプリを史上最年少で獲得し、いま、世界がもっとも仕事をしたがるデザイナーの一人。同時進行中のプロジェクトは400を超え、ルイ・ヴィトン、エルメス、バカラといったヨーロッパの名門ブランドから、「箸」や「樽」などの伝統工芸の職人からも信頼を勝ち取っている気鋭のデザイナーです。
彼がデザインしたプロダクトのひとつ「paper-torch(ペーパートーチ)」は、一見、市松模様がプリントされた普通の紙に見えますが、円筒状に巻くとライトが点灯するという、まるで手品のような懐中電灯。細く巻くと明るく、太く巻くと暗めに光るように設計されており、非常時・防災時にも役立ちそうな一品です。
思わず「そうそう、こんなの欲しかった!」と呟きたくなる、それでいて、自分ではなかなか思い付きそうにもない、しかもシンプルで格好いい。そんなプロダクトを生み出す世界的デザイナーの佐藤オオキさん。彼にとって“いいデザイン”とはどのようなものなのでしょうか。
「いいデザインとは、オカンに電話で伝わる」
佐藤オオキさんによると「発想力はセンスではなく、努力によって身につけることができる」そうです。佐藤さん自身、担当しているプロジェクトのすべてに全力で向き合い、考えて、考えて、考え抜いて解決策となるデザインを導き出しているといいます。日常に潜む不満や課題を見つけ、それを解決するための方法を考える力、そんな「デザイン思考」は、これからの時代を生き抜くうえで役立つ、本質的なスキルとなっていくでしょう。
そこで佐藤さんに「いいデザインとはなにか?」を聞くと、返ってきた答えは驚くほどシンプルで「オカンにも電話でも伝わるもの」だそうです。何の専門知識もないオカンに、電話で商品コンセプトを伝えて「面白い」と感じて貰えるほど、直感的に伝達できるものを常に目指しているそうです。
このたび発売となった『コップってなんだっけ?』も、たいへんシンプルでわかりやすいストーリー仕立てになっており、佐藤オオキさんのデザインへの考え方がそのまま絵本になったような一冊です。まるで、世界的デザイナーの頭のなかを、覗き見しているかのような気分が味わえるでしょう。
なぜ「絵本」を描いたのか?
「読むだけで発想力が伸びる絵本」の誕生秘話
このたび、佐藤オオキさんが初めて描いた絵本『コップってなんだっけ?』が発売になりました。でも、そもそもなぜ「絵本」だったのでしょうか? 佐藤さんいわく、いま一番伝えたいことを表現する手段が「絵本」だったといいます。
そう思うようになったきっかけのひとつが、2015年に出演したNHK「課外授業 ようこそ先輩」での出来事。母校に赴き、デザインのことをほとんど何も知らない子どもたちに授業を行い、課題を出すと、その発想の多様さ、柔軟さで佐藤さんを圧倒したのです。そして、この授業のテーマは偶然にも、後に絵本の主人公にもなる「コップ」でした。
ここで得たインスピレーションこそ、親子で一緒に読むことで、子どもが(もちろんオカン、オトンも)発想力を伸ばせるような「絵本」をつくりたい、と佐藤さんが考える大きな契機となったのです。
現在、川村元気さんが手がけ、子供の何にも縛られない自由すぎるアイデアを一流クリエーターが本気で形にする番組「オドモTV」(NHK Eテレ)にも出演するなど、オカンである親世代だけではなく、子どもたちへのメッセージも発しはじめた佐藤オオキさん。そんな彼が、「絵本」という形にたどり着いたのは、必然だったといえるでしょう。