ワナ6
「『子供のためを思って』という口実で
子供をスポイルしてしまう」

 「子供のためを思って」「あなたのためを思って」というのは、ひじょうに便利なフレーズです。子供が自分の力でやろうとしていることを先回りしておせっかいな手出しや口出しをしても、「子供のためを思ってやったこと」にしてしまえば、本当に子供のためになったかどうかなんて関係なく、親の役目を果たした満足感に浸ることができます。

 これらのフレーズを平気で使う親は、子供がいくつだろうと関係なく使う傾向がありますが、特に「受験生の親」という不安な立場にあるときには、どれだけありがたいことか。今こうしている間にも、多くの受験生の親が、声高らかに「お前のためを思って」「あなたのためを思って」と宣言しながら、子供を抑えつけているはずです。

 特に、威力を発揮するのは、子供が新しいことに挑戦しようとしているときや、親の支配下から逃れようとしているとき。高校の教師と示し合わせて「あえてあの学校に挑戦したい」「○○学部を受けたい」といった意欲をつぶしたり、親元を離れることになる大学を受けさせなかったり、行きたくないと言っている学校に勝手に願書を出したり。

 もちろん、子供が心得違いをしていて、本当にそうしてあげることが必要な場合もあるでしょう。しかし、親が子供に何かしてあげるのは、あえて強調するまでもなく、基本的には「子供のためを思って」のことです。わざわざ「子供のためを思って」と口にしなければならないのは、実は薄々、親のエゴを優先させているとか、納得させるだけの理由が乏しいといった「後ろめたさ」を感じているからにほかなりません。

 また、本当はそうしてあげるのが正解だった場合も、「あなたのためを思って」と言った時点で、子供に真意が届く可能性は限りなく低くなります。