2 持続可能性

 ケネディの発言が明らかにしているように、GDPは、天然資源をむしばむ経済活動(杉林の伐採など)、将来の浄化コストや病気の原因となる経済活動(汚染など)、あるいは、コスト計上されない災害の単なる復旧(救急車など)と、国富を増大させる経済活動とを区別できない。経済成長の持続可能性(環境面であれ何であれ)を測定するには、もちろん推定が必要となる。

 一般に「グリーンGDP」と呼ばれる指標の主唱者であるコロンビア大学教授ジョセフ・スティグリッツは、持続可能性に関する推定値は、現在GDPに含まれている推定値と比べても、その信頼性において遜色がないと考えている。彼は最近、「資源の枯渇や持続可能性のいくつかの側面を考慮に入れることは、実に簡単なことだ」と私に語った。

 エネルギー使用量や汚染の追跡がさほど困難ではないことは事実である。しかし、政治はけっして一筋縄ではいかない。

 ビル・クリントン政権は就任直後、アメリカのGDPを測定する機関である商務省経済分析局に対してグリーンGDPの開発を強く求めた。ところが、ウェストバージニア州選出のある連邦議会議員がこの取り組みを中止させた。同州の石炭鉱業が打撃を受けることを恐れたのである。中国のグリーンGDPの取り組みはこれよりはるかに進んでいたが、ここでも結局は、反対者によって頓挫させられた。