グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏。その圧倒的な経験の全てを込めた新刊『どこでも誰とでも働ける』の出版を記念して行われた、ゆうこす氏との対談の第2回です(第1回はこちら)。
アイドルグループ「HKT48」を脱退後、“どん底”を経験していたという、ゆうこす氏。しかしその後、たった2年でSNSのフォロワー100万人を達成。インフルエンサーとして多くの女子、そして企業から注目される存在になりました。
今回はその転身と成功を支えた、“モテクリエイター”ならではの能力に迫ります。
(構成:平松梨沙/撮影:疋田千里)
アイドル、モテクリエイターから「第3形態」へ
尾原 ぼくからすると、ゆうこすさんは今「第3形態」なんですよ。映画の「シン・ゴジラ」って観てますか?
ゆうこす 観ました! 石原さとみさんが出演してるやつですよね。
尾原 そうそう。「シン・ゴジラ」の中に出てくるゴジラは、どんどん進化して、形態を変えていくんですよ。ぼくは、ゆうこすも、進化の途中の段階だと思っていて。
第1形態:アイドル
第2形態:モテクリエイター、Youtuber
と素晴らしい進化をされてますが、最近さらに進化された第3形態に入っているのでは? プロデューサーとしての顔も出てきているでしょう。
ゆうこす よくご存知ですね! SNSアドバイザーもやっていますし、「やりたいことをやって生きたい人」を少しでも多く輩出したくて、先日は、ゆうこすの事務所に所属してもらう人を選抜するオーディションも開催しました。
尾原 プロデューサー方面の活動が増えていくことで、ゆうこすさんはさらに進化していくはずです。もう「スタートアップ起業家」って名乗ればいいと思っているんですよ。
ゆうこす え~、やだ!
尾原 えっ、いやですか?
ゆうこす だって……、かわいくない~!
1994年、福岡県生まれ。2012年にアイドルグループ「HKT48」を脱退後、タレント活動に挫折しニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始、「モテクリエイター」という新しい肩書きを作り自ら起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー100万人以上。著書に『SNSで夢をかなえる』(KADOKAWA)がある。
尾原 なるほど(笑)。ゆうこすを語るうえで「モテ」はとても大事な要素でした。
ゆうこす 私、産道から出てきた瞬間からぶりっこで、モテたがりでしたから。スタートアップ起業家も素敵な肩書だとは思うんですけど、「モテクリエイター」と名乗りながら活動を広げていったほうが、まわりの期待値が上がりすぎなくて、モテつづけられると思うんです。
尾原 それ、本でも書いた「期待値マネジメント」って言うんですよ! リクルート時代にさんざんやりました。たしかに、期待値って、上げすぎないほうがモテる。食べログや旅行サイトの口コミとかで、写真がめちゃくちゃいいなと思って現地に行くと、「あれ?」っとなることは多いでしょう?
ゆうこす ありますね~!
尾原 期待値はそこそこにしておいて、後から「おっ!」と思わせたほうが満足度は高くてリピートするのですよね。
ゆうこす ときどき講演の仕事をいただくこともあるんですけど、かわいい格好で行ったり、最初のツカミではずしたり……というのはかなり意識してます。
イノベーションを起こすために必要な「女神的な資質」
尾原 いい意味でなめられるのって、支持されるうえで大事ですよね。
SNSで徹底的に他人目線でいられるという話とも通じますが、ゆうこすさんがそれをできるのは、「モテ」を意識してるからですよね。モテは、この先の時代、とても重要な概念だとぼくも思っています。先日、女性誌の「with」さんで「私たちの5年後10年後」企画に寄稿させていただいたときも、モテについて書いたんですよ。
ゆうこす へえ、どんな話ですか?
尾原 このところ世界的に『女神的リーダーシップ』(プレジデント社)という本が売れてるんですが、これは、リーダーに求められる資質が共感力や相手に通じる表現力など、女性に特徴的な能力に変わってきているという本なんです。
今って、世界の変化がどんどん加速していて、新しいことをどんどんやっていかないと乗り遅れてしまう時代です。そういう時代に活躍できる方々は、遠い要素をかけあわせてイノベーションをできる人たち。ゆうこすさんのように、アイドルからモテクリエイターとか、西野亮廣さんのように、芸人から絵本作家とか。
ゆうこす はい。
尾原 イノベーションを起こすために遠い分野をかけあわそうとすると、自分から遠い人たちとの共感力や伝達力が、ものすごく大事になるんです。そうした資質を「女神的」と称しているんですが、ゆうこすさんと話ししていると、びしびし感じますね。
というのも、「モテ」を意識している人ほど、共感力や表現力を持っているんです。つまり、モテは世界を救うということです。
ゆうこす そんなに、世界的にモテが注目されてたなんて……。つまり、ゆうこすは、救世主ってことですか?
尾原 ぼくはそう思ってますよ! だから、お会いしたかったんです。
人生を変えた、「共感ポイントをつく」という発見
ゆうこす そこまで言われると照れちゃいますけど、よくわかる話でした。私も、自分がここまで成功できた理由は、共感ポイントをつくように行動できたからだって思っているので。
私、アイドルをやめた後、「スタミナ丼」のような売られ方をしていたんですよ。
尾原 どういうことですか?(笑)
ゆうこす 顔がちょっとかわいくて、胸が大きくてグラビアもやってて、元アイドルで、ぶりっ子という、男性の好きなもの全部乗せ状態。AKBグループを辞めたあと芸能事務所にスカウトされたのですが、私は「男性向けにグラビア売りしていこう」と売り出されようとしていました。
尾原 なるほど、言いたいことはわかりました。ちょっとどころか、かなりかわいいとは思いますけど!
ゆうこす ありがとうございます(笑)。でも、アイドルを辞めたあとの虚偽のスキャンダ報道のせいで発信するのも怖くなっちゃって……。どん底からの再スタートのときに気づいたんですよね。私は「アイドル」をやりたいんじゃなくて、男女問わず「モテたい」のであって、それはターゲットを変えればSNSで実現できるんじゃないかと。
顔も変わらないし胸の大きさも変わらないしぶりっこも変えてないんだけど、私に「共感」してくれる人のことを考えて、その人達に向けて発信するようにしただけで、人生がまったく変わったんですよ。
尾原 完全に「女神的」な発想ですね。素晴らしい。
ゆうこす しかも、Twitterのリツイート機能って、タイムラインという自分のスクラップブックに他人の発言を貼る行為ですよね。スクラップブックに貼ってもらうには、「わかる~!」「こうしたいな~」と思ってくれる人に向けて発信したほうが、確率は高い。
発信を女性向けに変えた当初は、批判的な意見も多かったですけど、そのうち、クラスに2~3人はいる「ぶりっこしたいけど人目が気になってできない」という人たちに届くようになりました。
尾原 フォロワーが100万人になった今でも、メインターゲットはぶりっこ?
ゆうこす そうですよ! スクールカーストの上のほうの人たちには、引き続き「ゆうこす無理」って言われてますから(笑)。クラスの中の2、3人がちょっとずつ集まってくれて、それが100万人。うれしくて、1人ひとりとハイタッチしたくなります。
「共感」と「数字」を両立させる世代
尾原 そういう人たちって、インターネット以前、しかもゆうこすさんが率先して発信する以前は、お互いにつながらなかったわけですよね。クラスで肩身の狭かった子たちが、ハッシュタグひとつで仲間になれるようになった。とても素敵な時代だと思います。それで思い出したんですけど、CEREVOって会社を知っていますか?
ゆうこす 知らないです~!
尾原 自撮り用のリモートシャッターなどを売っているんですけど、なんと自撮りをするときに、対象が「無重力」になった瞬間を察知してシャッターを押してくれるんです。
物を放り投げたときって、一番高くなったところで無重力状態になっているんです。無重力のときにシャッターを押してくれるということは……ジャンプ写真を撮りたいときに、一番高いところで撮影してくれるんですよ!
ゆうこす すごい! Instagramでスキがたくさんつく写真が撮れるってことですね。
尾原 そうそう! そんな商品、普通は売れないですよ。でも、Instagramの普及でそういう写真を求めてる人にはすぐ響くようになった、1ヵ国で100台しかしか売れなくても、100カ国で売れれば1万台になる。GoProのお陰ですごいサーフィン映像が撮れてシェアできるから、世界のサーフィン人口を増加させたらしいですよ。
ゆうこす そういう「仲間」同士の人たちは、良いと思ったものをお互いにすすめあってくれるからうれしいですよね。私も、自分が発信するときはつねに、「どうやったら口コミで広がるようになるか」を考えています。
尾原 断言しますけど、ゆうこすさんの支持者はこれからも確実に増えるし、今後はビジネスパーソンももっと注目していくと思いますよ。ぼく、ゆうこすさんと話していて、気になることがあって。
ゆうこす なんですか?
尾原 「共感」って、めっちゃエモーショナルな概念ですよね。ゆうこすさんはエモーションを大事にしてるのに、数字に対してのストイックさも持っているのが不思議。
ゆうこす 数字、大好きですよ!
尾原 どうして大好きなんですか?
ゆうこす うーん、育っていくなかで、数字を意識せざるをえなかったですよね。私、1994年生まれなんですけど、子どものころからパソコンとインターネットに囲まれていました。お絵かきはWindows95のペインターでやっていたし、小学校高学年のときには、みんなケータイ持っていた。
尾原 あー、iPhoneが世に出たときはまだ中学生か!
ゆうこす そうそう。高校時代にはiPhoneも持ってましたね。なので、SNSも、物心ついたころには生活の一部だった。
尾原 必然的に、友達同士で発言のリツイート数、ライク数を気にし合っていたってことですよね。
ゆうこす ソーシャルの数字を意識するのは、毎日の歯磨きくらい自然な行為ですよね。私の世代はみんなそうじゃないかな。
尾原 みんなが、頭に『ドラゴンボール』のスカウターをつけているような感じか。
ゆうこす そうそう!前はTwitterのエンゲージメントを調べるのって、面倒だったじゃないですか。でも、今はTwitterもInstagramも詳細なアナリティクスが見られるようになっていて、すごく便利。見やすくなったことで、意識的に拡散を頑張る人たちがもっと増えて、もっとライバル増えちゃうかも!?と思ってます。