グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏。その圧倒的な経験の全てを込めた新刊『どこでも誰とでも働ける』の出版を記念して行われた、ゆうこす氏との対談の第3回です(第1回はこちら)。

アイドルグループ「HKT48」を脱退後、“どん底”を経験していたという、ゆうこす氏。しかしその後、たった2年でSNSのフォロワー100万人を達成。インフルエンサーとして多くの女子、そして企業から注目される存在になりました。
今回はそのSNS活用法を、具体的に教えてもらいました。
(構成:平松梨沙/撮影:疋田千里)

インフルエンサーになっても、「私に興味ない人たち」を忘れない

尾原 ゆうこすさんは、日々のポストをする上で、とくに気をつけていることはありますか?

ゆうこす 最初にも言いましたが、「神様にならない」は大切です。自分の投稿が「神様目線」「俺様目線」じゃないか、いつも厳しくチェックしてます。

 インフルエンサーという活動を続けて、おかげさまでファンが増えてきたので、なおさら危険なんですよ。だって、「おはよう」とつぶやくだけで「かわいい」と返ってくるから。

尾原 それだけでコメント欄が埋まるような毎日ですよね。ぼく、Googleにいたとき、日本での「ぐぐたす」……Google+の事業開発責任者をやっていたので、よくわかります。

ゆうこす あー! 私もHKT在籍時はお世話になってましたね。

尾原 AKBのみなさんをぐぐたすにお迎えしたときに、前田敦子さんが「おはよう」って言ったら、ファンからの「おはよう」が殺到しちゃって、コメント欄が1分で埋まってしまったんです。その当時、ぐぐたすでは200件しかコメントができなかったんですね。

ゆうこす 全然足りないですよね。

尾原 苦情が殺到したので、どうにか本社に頼んで、コメント欄の数を倍にしてもらったんですけど……それも数分で埋まってました(笑)。

ゆうこす あはは。私なんか、アイドルを辞めあとにツイッターで「おはよう」って書いたら、「死ね」って書かれてたからなあ……。

ゆうこす(菅本裕子)
1994年、福岡県生まれ。2012年にアイドルグループ「HKT48」を脱退後、タレント活動に挫折しニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始、「モテクリエイター」という新しい肩書きを作り自ら起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー100万人以上。著書に『SNSで夢をかなえる』(KADOKAWA)がある。

尾原 そのエピソード、『SNSで夢をかなえる』にもありましたね。

ゆうこす 当時は真に受けちゃって、そういうコメントを読むたびに「死なないといけないかも」と思っていました。でも、落ち込んでいるときに、父親がUSJに行こうよって誘ってくれたんですね。

 それで外に出て街を歩いてみて、気づいたんです。世界中から「死ね」って思われている気がしていたけれど、街には、自分のこと知ってる人なんて誰もいなかった。自分が気にしてるのって、半径5メートルくらいだったんじゃないかな?って。

尾原 発想の転換ができたんですね。素敵なお父さんです。

ゆうこす 当時はそれで本当にラクになったし、逆にフォロワーが100万人になった今でも、私に熱狂してくれている人というのは、まだまだ世界の一部でしかないというのを認識しています。それよりも遠いところにいる、「私に興味ない人たち」のことを忘れないように。

情報を発信するときは、3つの「波」を意識する

尾原 興味のない人たちに対しても発信をするんですか?

ゆうこす もちろん。情報発信をするときには、届けたい人を3つのグループに分けて、それぞれに向けて発信するように気をつけています。

 第1波:熱量のあるゆうこすファン向け
 第2波:ゆうこすにふわっと興味を持ってくれている人向け
 第3波:ゆうこすのことをほとんど知らない人向け

ですね。

尾原 それぞれに伝えるうえで、ポストも分けているんですか?

ゆうこす はい。第3波の人たちにだけポストしたり、第2波の人たちが1になってもらえるようにという意図でポストしたり、細かく分けてます。

 たとえばツイッターだと、上が第1波で、下が第2波です。

尾原 おおー、確かに違う!ぼくの感覚だと、「モテ」って、第1波の人……熱心なファンを意識したものなんですよね。ゆうこすさんは、それ以外の人にも目配りしていてすごいことですね。

ゆうこす それは、私が信じられないくらい「人に愛されたい!」と思ってるからなのかな。

 あとは第1波の人たちを盛り上げるためにも、第3波の人に入ってきてもらうのが大切なんですよ。新しい人がこういうこと言ってくれてたよ!というのが伝わると、第1波の人たちも「でしょ~!」って喜んでくれる。

尾原 ああ! 自分が応援している人が周りからもすごいと言われていると、ファンの人はうれしいんですよね。そして第1波の人たち一人ひとりに出番を持たせて、共犯者にしてあげることも大事。ゆうこすさんも素晴らしいですが、ぼくはその天才が幻冬舎の箕輪厚介さん(@minowanowa)だと思っていて。とにかく自分や担当著書に言及されたら、ばんばんリツイートするじゃないですか。

ゆうこす 箕輪さんはすごいですよね! 箕輪さんも「波」を意識してるように思います。

尾原 実は数年前に、SEKAINOOWARIのFukaseさんからも、過去に似たような話を聞いたことがあります。

ゆうこす 私より早いじゃないですか!負けた~(笑)。

尾原 でも彼がその時言っていたのは「第2波」まででした。彼は、自分のために曲を書いたことがないそうで。「シンガーって、自分の気持ちを表現することを大切にしてるんじゃないの?」とぼくは思ったんだけど、彼は「友達がその曲を聞いたときに、友達の友達にどう伝えるか」ということを第一に考えていると言っていました。

ゆうこす それもやっぱり、「神様にならない」という話ですよね。

尾原 Fukaseさんも、周囲と同じ目線に立って共感を大切にしてますからね。同じ目線で語り続けるには、特別な強さが要る。ゆうこすさんも、これだけ人気が出て、ものすごく高いブランドものを身につけていてもおかしくないんだけど、そうはしていないのがすごい。

ゆうこす ちょっと性格悪く聞こえるかもしれないですけど、私はカッコつけなので今の「身近な存在としてのナンバーワン」の立場を崩したくないんですよ。高いものを身につけるのも楽しいかもしれないけど、第一線で活躍してるような女優さんには勝てませんから。ずっと身近な存在として好きでいてもらえるように、「私を応援してくれてる人が真似できるか」を必ず意識している。

尾原 全然性格悪くないですよ!「モテ」の基本だと思います。

ゆうこすと小林幸子の共通点

ゆうこす 「身近さ」を意識して、実践し続けられるインフルエンサーは絶対強いと思っています。

 歌手の小林幸子さんが紅白歌合戦に落選した後、ニコニコ動画に「歌ってみた」動画を投稿しはじめたじゃないですか。あれに対して「落ちたな〜」みたいに言っていた人も多かったと思うのですが、結果として大人気になって、「千本桜」で紅白歌合戦に再出演するまでになった。小林さんの「降りた」ところで楽しむ姿勢が本当に素晴らしいと思って、私も励まされました。

 私も初めて生配信——SHOWROOMに出たときは「落ちた」と言われたんですよ。

尾原 えっ! AKBさんだって出てるじゃないですか、SHOWROOM。

ゆうこす 2年前なので、まだAKBも出てなくて、今ほど知られていないサービスだったんですよね。でもめげずに続けて、本当によかったなと思います。こういう話をすると、芸能人の方たちが「降り」てきちゃうな〜って不安なんですけど(笑)。

尾原 単に「降りた」だけでは真似できないと思いますよ。ゆうこすさんと小林幸子さんには共通点があるんですよ。

ゆうこす なんでしょう?

尾原 それはどちらも「本当に良い」「好き」と思ったことだけを発信していることです。小林さんは「ウケる」というだけで「千本桜」を歌ったんじゃなくて、本当に良いと思って本気で歌っていたでしょう? 偽物かどうかって、インターネットだとすぐバレちゃうじゃないですか。

ゆうこす わかります! 私も、ニセのぶりっ子だったら、絶対ばれちゃってたわけで。

尾原 料理タレント時代は、そうでしたよね。あんまり好きじゃなさそうだった。

ゆうこす バレバレでしたよね(笑)。今は本当に好きなことを好きなやり方で発信できているので、すごく楽しいんです。そして、SNSを続けているうちに実感したんですけど、フォロワーを増やすというのは、「仲間をつくる」ことなんですよね。

AIにできなくて、インフルエンサーにできること

尾原 ゆうこすさんにはもう100万人の仲間がいるわけじゃないですか。しかも、モテクリエイターにインフルエンサーにSNSアドバイザーに……と、どんどん肩書が増えている。新しく仲間になる人の種類も変わってこられてますよね? 堀江さんや家入さんとも対談してましたし。

ゆうこす これまでに仲間になってくださったみなさんのおかげで、お会いできる人の幅が広がったなとは思います。堀江さんや家入さんとつながることができたのも、ファンの方のおかげなんですよ。私が「SNSアドバイザーになりたい」と言っていたら、そっち方面への発信をしてくれたんです。

尾原 ファンの方が?

ゆうこす そうです。私の記事URLを添えたメンションを堀江さんやや家入さんに飛ばしてくれて。雑誌やアパレルのお仕事が来るようになったのも、ファンの人たちの口コミですね。それぞれがお店に行くときに「ゆうこすのSNSで見て来ました!」と伝えてくれるんです。

尾原 それはすごい。

ゆうこす わざわざその場で「ゆうこすとは何者なのか」まで紹介してくれる人もいるらしくて(笑)。そのおかげで、企業のほうでも「ゆうこすってすごいんだな」という認知が広がっていって、お仕事が来るようになりました。熱狂してくれる人たちのベースができあがったことで、ネット上の立場だけじゃなくリアルにも変化が訪れました。

尾原 女神型リーダーシップの典型ですね。第1回で、人間の仕事はこれからAIにとられていくという話をしましたが、実はAIにもできないことがあるんです。

ゆうこす なんですか?

尾原 1つは、これまでのデータがないことをやること。ソフトバンクの孫正義さんは、2000年の段階でアリババに投資し、8兆円の含み益を手にした。その時点では、まだ誰も中国ECサイトが成功すると思ってなかったし、データもなかった。だけど、彼は決断できたんですよね。

 そしてもう1つが、共感してもらうこと。AIが人に「これが最適な選択だからやりなさい」と言っても、その人がやるかは別じゃないですか。でも、ゆうこすのフォロワーの人々は、ゆうこすのために率先して行動してくれる。「共感」はイノベーションにも必要ですし、AIに代替されないためにも必要な力なんです。

ゆうこす 「100年仕事しないといけない」「しかもAIに仕事をどんどん奪われる」という話が冒頭で出たときは不安でしたけど、安心しました。AIがどんどん仕事をやってくれて、遊びだけしていてよくなったら、最高なんじゃないの?って思ってきました。ゆとり世代なので! (つづく)