グーグル、マッキンゼー、リクルート、楽天など12回の転職を重ね、「AI以後」「人生100年時代」の働き方を先駆けて実践する尾原和啓氏。その圧倒的な経験の全てを込めた新刊『どこでも誰とでも働ける』の出版を記念して行われた、ゆうこす氏との対談の最終回です(第1回はこちら)。

順風満帆に見えるゆうこすですが、実はひとつ苦手なことがあって……。尾原さんが最新の経営理論にもとづき、ゆうこすの今後にアドバイスします。(構成:平松梨沙)

「尽くす」ぶりっ子は、コミュニテイの運営が苦手

ゆうこす AIが進化することで、「共感」がますます大事になると聞いて、得した気分です。気持ちよく応援してもらうためにも人間らしいところを発信していこうって、私はいつも心がけてるので。

尾原 さらに言うと、実は共感にも2種類あるんです。1つは「あの人は私のことを理解してくれているから、役に立ちたい」という共感。もう1つは「私はあの人のやりたいことを一緒に実現したいから、役に立ちたい」という共感。後者のほうの共感を獲得できるほうが、断然強い。

 たとえばAppleが世界で一番時価総額のある企業になれたのは、「Appleが理想としている世界を私も一緒に実現したい」という消費者を増やしていけたからなんです。

ゆうこす あー。私、後者は苦手かもしれません。というのも最近オンラインサロンを始めたのですが、コミュニティづくりにかなり苦戦していて。

尾原 お、それはぼくが唯一ゆうこすさんにアドバイスできるポイントかもしれない!

ゆうこす きた~~~!(笑) どうするのがいいんでしょう?

ゆうこす(菅本裕子)
1994年、福岡県生まれ。2012年にアイドルグループ「HKT48」を脱退後、タレント活動に挫折しニート生活を送るも、2016年に自己プロデュースを開始、「モテクリエイター」という新しい肩書きを作り自ら起業。現在はタレント、モデル、SNSアドバイザー、インフルエンサー、YouTuberとして活躍中。Instagram、Twitter、LINE@、YouTubeなどのSNSのフォロワー100万人以上。著書に『SNSで夢をかなえる』(KADOKAWA)がある。[撮影:疋田千里]

尾原 簡単なことです。もっと頼りないところを見せて、人に任せるように心がけるんです。

 常々言ってるんですが、「信頼」って言葉がありますよね。これって、「信じて頼られる」んじゃなくて「信じて頼る」ということなんです。相手を信じているからこそ、相手に頼れる。ゆうこすさんにもそれが必要だと思いますね。

ゆうこす わかった、箕輪厚介さん(@minowanowa)がすごく得意なやつだ!

尾原 そう!箕輪さんとか家入一真さん(@hbkr)とかって、情熱とやりたいことはめいっぱいあるけど、いい加減じゃないですか(笑)。待ち合わせに来ないしメール返してくれないし。でも周囲の共感してる人たちが、なんだかんだサポートしてくれて、回っている。

 もっと言うと、これは人間のモチベーションとも関係している。目的もやり方も、他人に言われて見つけるよりも、自分で見つけた人のほうがモチベーションが高くなるんですね。家入さんと箕輪さんは、人のモチベーションを誘発できる最高のリーダーなんです。

ゆうこす SHOWROOMの前田裕二さん(@UGMD)がよく言っている「スナック型コミュニティ」ですよね(笑)。「余白」……未完成な部分を持っている人がリーダーだと、周囲が自分から率先して助けてくれるようになって、コミュニティがうまく回るという。

尾原 ゆうこすさんは、いろいろ自分でやれちゃいますよね。

ゆうこす なんでも得意というわけではないんですよ。でも、ぶりっ子だから「尽くし型」なんです。

尾原 そうか。

ゆうこす 相手に伝わりやすいかとか、行動がスムーズにできるかを、1人でものすごく考えちゃう。オンラインサロンでも、企画を考えたりイベント開催したりチケット売ったりということを全部自分でやってしまって。そうしたら、自由に発言しあえる場のはずなのに私だけが発言しているようになっちゃって。

「どうしてだろう」とすっごく悩んで、箕輪さんのサロンをのぞかせてもらって、「なるほど!」と思いました。ちょうど反省していたところです。

尾原 適切な「穴」をあけることで、周りも動きやすくなるのはあるんです。たとえば、堀江さんや家入さんにつないでくれたのは周りの人だったと言ってましたよね。すでにゆうこすの手の届かないところを埋めてあげたいと思っている人たちはいるんだから、あとはゆうこすさんが穴をあけるだけです。

ゆうこす がんばります!

適切な「穴」をつくる簡単な方法

──意図的に穴をあけるのと、自然な“ぶりっこ”のままで居続けるのは、両立できるんでしょうか?

尾原 簡単です。自分がやりたいと思っているけど、苦手なことに取り組んでみるんです。生きがいについて話すときによく言うんですけど、「好き」と「得意」と「お金が稼げる」と「世間が求めてる」の4つの要素をそなえた分野で活躍できると、たしかに幸せなんですよね。ゆうこすさんの場合は「SNS」と「モテ」がそれ。でも、それだけやってると、人がゆうこすさんを手伝えないんですよ。

 ゆうこすさんが好きだけど、得意じゃないことを始めてみるといいと思います。

ゆうこす うん、うん。

尾原 箕輪さんの例で言うと、彼は著者を誰よりも愛するのは得意だけど、他のことがかなり苦手じゃないですか。彼は「好き」と「得意」がずれたところで勝負しているからこそ、他の人が埋めてくれるんですよ。

ゆうこす なるほどなあ……。ぶりっこはSNSには向いているんだけど、コミュニティづくりではダメなところが出ちゃうのかも。

尾原 「コミュニティは苦手かも」って言ってしまえば?

ゆうこす ちょうどつい先日、言いました! もう本当に「ダメだな~」と思ったので、サロンのなかで「実はコミュニティが苦手だ」ってめっちゃ長文を書いたんです。

尾原 いいですね!

ゆうこす そうしたら、サロン内で部活がばーっとたちあがって。「ゆうこすPR/拡散/WEB運営部」とか「ゆうこす編集/ライター部」とか。私以外のメンバーの行動が始まったんですね。

 私、「PDCA」というのが苦手で、とにかく自分がD(実行)することから始めてしまいがちなんですが、ちゃんとP(計画)することの大切さを実感しました。

尾原 一度そうやって隙間が伝わると、みんなそうやって埋めてくれるんですよ。隙のあるプランをつくるのが大事です。共感してる人から「お願い」って言われたら、みんなうれしいんですから。

ゆうこす 早くサロンでいろいろやりたくなってきちゃった! 楽しみ~。

変化する時代の経営理論「エフェクチュエーション」

尾原 今のゆうこすさんは、「モテ」にかかわることだけやって生きていける状態だと思うんですけど、活躍の場が増えて仲間も増えたことで、モテ以外にもやりたいことが増えてきたんじゃないですか?

ゆうこす そうなんですよ! 好きだけど得意じゃないやりたいことはちらほら出てきてますね。

尾原 目的が変わってきてるということですよね。ここで、経営学で注目されている「エフェクチュエーション」という概念の話をしたくて……。

ゆうこす ちょっと! また難しい単語が出てきた~。最近、30~40代の方とお話する機会が増えてから困ってるんです。言葉が難しいんですよ~。みなさん、やたら「フェーズ」って使うし。「段階」でいいじゃん!

[撮影:疋田千里]

尾原 まあまあ、ちょっとだけ聞いてくださいよ(笑)。

ゆうこす 聞きます(笑)。エフェクチュエーションって、たぶん「エフェクト」と関係ある言葉ですよね。

尾原 そう、エフェクトは「効果」のことですよね。エフェクチュエーションというのは、ざっくり言うと「自分がとれる手段の実効性を確認し、目的を上書きしながらビジネスを進めていくこと」です。

ゆうこす うーん……?

尾原 今までのマーケティングって、「目的を決めて、そのために手段を設定しろ」という手法が多かったんですね。でも、技術的イノベーションがどんどん起きて、価値観も変化している時代だから、目的だって上書きしていかないと追いつけない。そうやって、手段にもとづいて目的を変え、変わった目的に応じてさらに新しい手段を選択する……という循環を発生させる柔軟な思考様式の理論が、エフェクチュエーションです。

ゆうこす なんとなく、わかる気がしてきました!

自分だけの「キャッチコピー」をつくろう

尾原 エフェクチュエーションの実践のために、さらに5つの行動原則が設定されているんです。

 そのうちの3つを説明しますと、1つ目は、「バードインハンド」。ゆうこすさんは、童話の「青い鳥」ってわかりますか?

ゆうこす 見つけたら幸せになれるという青い鳥を探して旅に出るんだけど、全然見つからなくて、家に帰ったら実はいた、という話ですよね。

尾原 そうそう。あの童話にちなんで、壮大な理想を追い求めるのではなく、自分の手のなかにいる鳥……自分が今できることから物事をはじめようねという原則です。ゆうこすは、これはすでにできていると思うので、これから大事になってくるのが「クレイジーキルト」の原則と「レモネード」の原則。

「クレイジーキルト」というのは、自分ができることからスタートしたときにランダムに作られていった人脈を、うまくいかすようにパッチワークを考えろという話。「レモネード」というのは、アメリカ人が最初によくやるバイトのひとつである「レモネード売り」にちなんでいて。偶然の出会いを大切にして、それに対する対応をすばやく行えという話です。

ゆうこす ふむふむ。

尾原 ゆうこすさんは、「バードインハンド」で活躍していくなかで、新しい人達にバンバン出会っている。今は、その出会った人たちをうまく組み合わせて新しいことをやっていき、偶然の結果のなかからさらに目的を見つけていくという段階なんだと思います。

 目的が変わっていくなかで、ゆうこすらしさや、ゆうこすという存在の意味合いも変わっていくんじゃないかな。

ゆうこす 尾原さんから「スタートアップ起業家を名乗っては」と言われたときは、「やだ~!」って思ったんですけど、モテクリエイターの次の段階に行かないといけないなというのは、自分でも考えているんです。タレントだし、飽き性でもあるので。

尾原 だいたいどれくらいのスパンで、新しいことを考えているんですか?

ゆうこす 半年ごとですね。今後は、エフェクチュエーションの考えも参考にしてみます! ……と、話しているうちに思い出したことがあります。最近、私の個人事務所の仕事として、芸能マネジメントを始めたんです。それでオーディションの募集をしたら、なんと4000人の応募がきまして。

尾原 すごいな。

ゆうこす 全員分のメールを読ませてもらって、300人に絞って、面接をやりました。でも、話を聞くと、ほとんどの方が「マルチタレントになりたい」って言うんですよ。

 マルチタレントとして活躍してる人は確かに一定数いるので、それが「夢」というのはわかるんです。でも、まだ何者でもない人が「マルチタレントになりたい」と言っても説得力がない。まずは得意なことで1位にならないといけないから、得意なことをアピールしてほしいのになあ~とちょっと残念でした。これって「青い鳥」の話かなと思ったんです。

尾原 そうですね! マルチタレントは遠くにいるようで見つかりにくい「青い鳥」だから、最初からそれを探しても難しく、最初からる手のうちにある鳥をはばたかせる手段を考えないとってことですね。

ゆうこす 自分を端的に言い表したキャッチコピーがつくれる人が、強いと思ってます。モテクリエイターというのも、そうなんです。みんながマルチタレントを目指すと、席はちょっとしかないけど、一人ひとりにしかできないことをやれば、みんなでコラボもできる。他のものになりたくなったら、目的を変えればいいし。

尾原 それって最近経営論でいわれていることそのものですよ! 対談してみて、ゆうこすさんは、どんなときでも人にわかる言葉でしゃべり続けられるのが素晴らしいなと思いました。ぜひ、上の世代に向けた講演などをどんどんやってほしいです。30~40代の人は衝撃を受けますよ。

ゆうこす ある意味では、無知でよかったなと思います。「ルール破りすぎでしょ!」で、逆に好感をもたれることも多いので(笑)。

尾原 仲間を大事にされているし、軸がぶれてないし、めっちゃかっこいいと思いました。

ゆうこす うれしい~! 今日はお酒が美味しく飲めそうです。最後に、尾原さんにひとつお願いをしていいですか?

尾原 なんでしょう?

ゆうこす 今度は直接お会いしたいです~!

尾原 さすがモテクリエイター! もちろんです。今日はありがとうございました。 (おわり)

[撮影:ゆうこす]