とはいえ、停車駅が少ない上に密室という、セキュリティ上最悪とも言える環境で起きた事件だ。これから先、乗客の安全をどう守ればよいのだろうか。手荷物検査の対策には限界があるという前提で言えば、万が一このような事件が起きた際に行うべき危機管理を、日頃から周知しておくということに尽きると思う。

凶行の現場から逃げるとき
決して振り返ってはいけない理由

 今回の事件について、知人の危機管理の専門家に確認したところ、これまでに報道されていないいくつかの興味深い視点を得ることができた。参考までに紹介したい。

 今回、事件は新幹線の車内で起きたが、状況としては普通の電車の車内、繁華街の雑踏、混雑した商業ビルの中など、通り魔的凶行が起き得る全ての場所において、考えるべきリスク対策は同じであるということだ。

 その際、灯油に火をつけられたり、催涙スプレーを撒かれたりするような事件に巻き込まれたら、身を守るのは難しい。いくら「危機管理」といっても、逃げられなければどうしようもない。危機管理面の対策でいえば、予め周囲に目を配り、おかしな動きをしている人がいたら、その場を離れることしかできない。

 それよりも、事件が起きた直後の対応で差が出るのは、今回のように「刃物」による凶行に出会ってしまった場合だという。まず、見知らぬ人物に刃物で切り付けられたときの対策だが、危機管理上はカバンを盾として使うのが有効だという。といっても、筆者が持ち歩くようなビジネスバッグのことであり、女性が持つハンドバッグは用途に合わないかもしれないが、書類の入ったバッグは刃物ではなかなか突き刺せないそうだ。

 今回の事件で知られるようになったが、新幹線の車内では、JR東海の車掌が「新幹線の座面を外して盾のようにしてください」と指示し、実際に多くの乗客がその指示に従ったという。実は、JR東海のマニュアルではこうした事件を想定し、座面を外して防御に使えるようになっている。これを機会に覚えておきたいと思った。

 次に、自分から少し離れたところで事件が起きた場合である。これは「迷わず逃げる」が正しいそうだ。新幹線の車両だけでなく、街中の通り魔でも対応は同じ。