フランスと英国が狙う一発逆転のEVシフト
一方で、中国に次いで二酸化炭素排出国第2位の米国のトランプ大統領は、二酸化炭素排出による温暖化の可能性そのものについて懐疑的な姿勢を示し、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」からの離脱も表明している。
また環境保護局(EPA)や内務省のホームページから、温暖化に関する情報を削除するだけでなく、火力発電所からの温室効果ガス排出量を制限する規制「クリーン・パワー・プラン」についても撤廃すると正式発表するなど、温暖化対策に後ろ向きの措置を取っている。
性急なエネルギーシフトは既成産業に対するネガティブインパクトが大きく、資源枯渇の問題が急を要する課題でない限りは、効率面を考えれば、現在あるエネルギー源を使い続けるというのは、極めて合理的な判断とする見方もある。
そもそも、EVが石油の消費量の削減に寄与するかは疑わしく、自動車の生産から最終的な廃車までのライフサイクルで評価すると、二酸化炭素排出量はガソリン車やディーゼル車の方が少ないという分析もある。
それにもかかわらず、フランスや英国が2040年までの「ガソリン車、ディーゼル車の販売禁止」を打ち出すのはなぜか?
フランスと英国はいずれも自国内に自動車メーカーを抱える自動車生産国だが、その国際競争力は決して高い方ではない。
中国、米国、日本、ドイツ、インドのトップ5に対して、フランスは11位、英国は13位と今や韓国やスペインの後塵を拝している。3位と4位を占める日本とドイツは、いずれも二酸化炭素排出規制に関して極めて積極的な国だが、自動車産業においてはハイブリッド技術で先行し、EVに対しては必ずしも積極的ではない。
フランスと英国はこのような自動車産業における自国の国際競争力や技術の劣位を逆手に、一発逆転を狙ったのではないか、と見ることもできる。
特にフランスはルノー・日産のカルロス・ゴーンが早い段階からEVへの投資を進め、ルノー・日産合わせてグローバルで販売されたEVの数はテスラのそれを大きく上回ると見られる。