教員採用試験の直前対策!
本記事では、発売たちまち3刷が決まった、元NHKアナウンサーの超人気講師で「ウェブ小論文塾」代表・今道琢也氏の新刊『落とされない小論文』から、内容の一部を特別掲載する。(構成:今野良介)
「聞かれたことに答える」という
大前提を無視した答案例
教員採用試験の小論文でよくある失敗として、学習指導要領などに出てくるキーワードを、出題内容と無関係に書くことです。
たとえば、次のような事例です。
【教員試験の想定問題】
子どもたち一人一人が持つ豊かな才能や能力を伸ばしていくために、あなたは教員としてどのように取り組むか、考えを述べなさい。
【低評価の解答例】
子どもたちはそれぞれが豊かな才能・能力を持った存在であり、教員には、それを伸ばしていくことが求められる。特に近年では国際化が進む中、外国人と触れ合う機会も増えており、小学校でも外国語教育を充実させていくことが重要だ。そのために、私は次のことに取り組んでいきたい。
まず、子どもたちが楽しみながら英語に触れる機会を作っていく。例えば教室の黒板、机などに「blackboard」「desk」と書いたカードを貼って置き、子どもたちが日常的に英語に触れ関心を持つような仕掛けを作っていきたい。また、英語の絵本の読み聞かせをしたり、英語の歌を歌ったりする時間を作ることも効果的だ。絵や音楽という親しみやすい素材を使うことで、単語の意味はわからなくとも、英語に触れることができる。さらに……(以下省略)
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この答案は、「外国語教育」に絞って論を展開しようとしています。
しかし、普通に考えれば「子どもたち一人一人が持つ豊かな才能や能力を伸ばす」とは、どんな分野であれ、その子が伸びそうなことを見つけてその力を引き出すことですから、「外国語教育」に限定した書き方をするのはおかしいはずです。
話がすり替えられてしまっているのです。
このような答案を書く人は、たとえば「生きる力」「言語活動の充実」「体験活動の充実」「外国語教育の充実」など、とりあえず学習指導要領など出てくるキーワードを使って書いておけば点数がもらえるだろう、と勘違いしています。
小論文試験とは文章としての論理性、説得力などを見ているのであって、「生きる力」などのキーワードが入っているから点数をプラスする、などという採点をしているわけではないのです。
そういうキーワードを書くにふさわしい出題、論文の展開であれば、もちろん書いて良いのですが、そうではないのに無理やりはめ込んでも、評価を下げることにしかなりません。
この答案を、たとえば、次のように書き直してみます。
【高評価の解答例】
子どもたち一人ひとりの持つ豊かな才能・能力を伸ばすためには、教員が子どもの持つ力を意識的に引き出すことが必要だ。そのためには、子どもをよく観察し、それぞれの子どもの得意分野や才能に気づくことが大事だ。
たとえば「○○さんは工作がうまいね」「○○君は計算が得意だね」など、子どもたちの良い部分を見つけ積極的に声かけすることで、子どもは自分の優れた才能や能力に自信を持ち、さらに頑張ろうという気持ちが湧くだろう。また、それぞれの能力が活躍できる「場」を用意することも有効だ。勉強は苦手でも、行事や学級活動で活躍する子もいる。たとえば、音楽が得意な子どもに合唱大会の指揮を任せる、書道が得意な子にクラスの標語を書いてもらうなど、それぞれの優れた才能・能力が活きる場を用意したり、スポットが当たる場面を作ったりすることが大切だ……(以下省略)
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この答案では、取り立てて学習指導要領に出てくるキーワードは使っていませんが、問題で問われたことを正しく受け止めて、書き始めています。
「出題を正しく理解して書くこと」、「論理的な展開が出来ていること」が高評価につながるのです。
当然のことだろうと思われるかもしれませんが、上記【低評価の解答例】のように、キーワードを使うことを前提にした答案が少なくありません。
『落とされない小論文』では、このほか、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に使い倒してください。