「株買い一色」の世界ではなくなる

 さて、連載第1回で「時流に合った投資を行うことで、巨万の富をつくり得る」とお伝えしました。これからはグローバル化が継続するものの、これまでのような効率性の追求が民意によって阻まれるケースも出てくるため、「株買い一色」の世界ではなくなるということを念頭に置くべきです。

 地元のタクシー業界と対立する可能性があるウーバー(Uber)や地元の消費需要を奪うアマゾン(Amazon.com)などのように、世界規模で効率性を求めるビジネスモデルは、職を奪われることを恐れる民意を反映した各国の政権によって、市場から退場を迫られるケースが出てくる可能性もあります。

 その一例として、バルセロナ市の規制強化があげられます。同市では、エアビーアンドビー(Airbnb)などの民泊ビジネスを利用して外国人観光客に高値で部屋を貸し出そうとする大家が相次ぎ、住人の追い出しを図ろうとするケースが問題となりました。

 その結果、民泊規制を強化する決断をくだしたのです。このように国境を越えたグローバル企業が現地との軋轢を引き起こしたときには、現地の多数派を優先する裁定がくだされる可能性が今後は高まっていくでしょう。

価格破壊をもたらすだけの産業に投資してはいけない

 資本主義の特徴は、集積された資本を循環させることで利潤の最大化を追求するところにあります。資本を消費することのできる空間を常に発見・拡大していくことが、資本の発展には不可欠です。

 そのため資本主義は、そうした投資チャンスを発見する行為へと人々を否応なく駆り立てていきます。だからこそ、オランダのチューリップバブルなどの投機や、はたまた朝鮮出兵や世界大戦のような、非常識で悲惨な事態が起こることになるのです。

 現代においても、世界的な量的金融緩和によって膨らんだ資本が、マイナス金利政策やそれに続く債券バブルを引き起こし、財政規律の弛緩と史上最大の債券発行残高をもたらしています。

 私たちの社会がマネー至上主義、すなわち資本主義を採用している以上は、「資本集積→利潤追求→資本投入→資本過大・利益機会過少→資本毀損」という法則はいつの時代も変わらないのです。

 これからの世界では、利潤の効率化・最大化を求めて高速で動く資本が、国家間の壁にぶつかって摩擦を受けることが多くなっていくと予想されます。

 すなわち「民主主義+グローバル化」という組み合わせの世界の到来で、これまでにも増して資本活動の行き詰まりが見えてくることになります。利潤の最大化を追い求めることが、民意とぶつかりやすくなる世界の到来です。

 バブルやバブル崩壊などの大きな変動を社会にもたらす金融資本への風当たりも、今後は大きくなっていくでしょう。

 市場が管理相場に傾きがちになるこうした社会では、モノ・サービス・カネが減少していくことは必然で、それは株式市場の「冬の到来」を意味します。

 今や、高度成長を追い求めることは時流に反します。こうした時代の投資先として価値のある事業とは、独創性のあるモノやサービスを提供しながら相手国の雇用に悪影響を与えないよう配慮する事業か、マイクロファイナンスのように相手国に雇用や付加価値を創出できる事業だと考えます。

 価格破壊をもたらすだけの産業には投資するべきではありません。これからは国の政策もベーシックインカムのようなすべての人々が安心して生活を送れるような制度を導入するなど、保護主義の蔓延を予防し、非効率な経済が示現しないように努めることが大切となるでしょう。