売り上げを立てるだけの社員は評価されない
実際、社内では大きな混乱が起きたらしい。セールスにしても目標の目安にしていた全体の売り上げに到達しているのに、従来のように評価されないケースもあった。というのも、求められているのは、クラウドの消費量を伸ばすということだからだ。
「全体の売り上げが評価対象のメインではないわけです。重視されているのは、消費量がどんどん上がっているかというデータです。インセンティブボーナスの指標もこの消費量のデータ、実績に移っています」
そうなれば、仕事のスタイルも変わらざるを得なくなる。とにかく猪突猛進に顧客にアタックしていくら契約だけ取ってきても評価はされにくいのだ。
アプローチする顧客の対象部門も従来のIT部門のみならず、さまざまな事業部門や役職の責任者にアプローチし、関係構築を図り、マイクロソフトのソリューションの理解を深めなければいけない。
そのためには、社内の各部署とリレーションを深め、いろいろな提案ができる体制を作り、より多くのアプリケーションを顧客に採用してもらい、活用してもらって消費量を増やしたほうが評価される。
あるいは、一人だけ大きな数字を獲得し実績を残したとしても、会社への貢献という点では評価されない。
それよりも、チーム内やチームの垣根を越えて多くの人を巻き込み、いいコラボレーションができるような新たな取り組みを進める、また、他者の取り組みにどれだけ巻き込まれたか、他者のインパクトにどれだけ貢献したか、というのが評価対象になる。
「営業力がある、お客さまと良いリレーションがあるというスキルは、契約を取るには役立ちます。加えて、消費量を増やすためには提案力が必要になるんです。むしろ、面白い使い方の提案ができることが問われる。ですから、ITに詳しいというだけでなく、その業界や会社に詳しいほうが強みになったりもする。かつ、そういう人をどれだけ巻き込めるかが重要になる。新しいフォーメーションで、コラボレーションをベースにビジネスを進める機会が増えています」
実際、他のIT企業でバリバリ営業をしていたという人物以外にも、ベンチャーのスタートアップでいろいろな企画をしていた人物や、流通、金融、製薬などの領域に強いスペシャリストのような人材も採用し始めているという。
「ですから、昔のようにWindowsの知識がないと営業はできません、という時代ではなくなっているんです。むしろ、オープンソースの知識を持った人が提案をしたほうがいいかもしれない。各業種や業界の知識がとても重要になってきますから、業界を知っている人も歓迎です。求める人材もどんどん変わっているんです」