テレビCMの長さは通常15秒です。人は、他人の話を聞いて、覚えているのはキーワードのみ。ですから、ひとつのメッセージは15秒以内に、そして最初から、伝えたいキーワードを決めて話す。これを知っているかどうかで、仕事のパフォーマンスが違ってきます。
元人気DJ、さらに不動産会社でのトップ営業やベンチャー企業で取締役営業本部長を経験、そして、現在はトップ講師プロデューサーとして、延べ2万人を指導している話し方のプロが教える新刊『相手のキャラを見きわめて15秒で伝える!』から、内容の一部を紹介します。

新人でも上司が動いてくれる伝え方とは?

上司が動いてくれる
新人がやっていること

Q.営業で上司に同行をお願いしたい!

× 「お客様のアポに同行していただけませんか?」
「大きな契約を狙えるアポへの同行お願いします」

 仕事で上司を動かしたい場合があります。
 人を動かす必要があるのは、何もリーダーやマネジャーだけではありません。
 人を動かす立場になったからその必要性がでるのではなく、そもそも人を動かすことが上手い人がリーダーやマネジャーに抜擢されるのです。

 だから、人を動かすための伝える技術は、新人の頃から身に付けるべきです。

 以前こんなことがありました。

「羽田さん、僕が絶対に契約を決めたいお客様がいるのですが、そのお客様は経営センスが抜群で、ロジカルも強いんです。このお客様は羽田さんでないと対等に話ができないと思うので、是非アポに付いてきていただけませんか?」

 私は、新人の部下からこう持ちかけられて、二つ返事で了承しました。了承したどころか、ちょっと気分も良くなり、この新人のためなら、何でも協力してあげようという気持ちにもなっています。

 ここで重要なのは、単にお願いをするだけではありません。
 今回の悪い例の場合、「お客様のアポに同行していただけませんか?」だけだと、自分自身の意志も無く、なぜ上司が同行しなくてはいけないかの理由もないので、わざわざ同行する動機が生まれません。

 しかし、伝え方を変え「大きな契約を狙える」と付けるだけで、上司が同行する意味も生まれ、自部署に大きな利益をもたらす契約なら動こうという動機も形成されます。

 私を動かした部下は、私の特性をしっかり掴んで、理由と動機を強めた上に、「羽田さんでないと対等に話ができないと思うので」と、私のプライドまでくすぐって気分良くさせています。

 後日、その彼が「羽田さんは褒めれば簡単に動くから」と同僚に話しているのを聞いてしまいましたが、褒めどころを分かっているので良しとしましょう……。

 このように先輩や上司を動かすことができれば、まだまだ自分には受注する営業能力が無くても、契約を取ることができます。最終的なクロージングは、先輩や上司が動いてくれたおかげだとしても、「実績」は間違いなく自分に付き、評価もされるのです。

 もちろん、リーダーやマネジャーに昇格した時も、部下を動かす力と同時に、上司を動かす力がその人の成果となり返ってきます。自部署の利益になるように、会社を動かし上司を動かすことができる人が、結果的にその部署の成果も上げられます。

 また、部下の不満の大きな要素として、「うちの上司は全然上にモノが言えない」というものがあります。下にばっかり偉そうにしていても、上にモノが言えない上司は評価されません。
   若手の頃から、どのように上司に伝えればいいのか、そして、どのように上を動かすことができるかを考えて行動することで、大きく成長できるのではないでしょうか。

新人でも上司が動いてくれる伝え方とは?羽田 徹(はだ とおる)
話し方コンサルタント・トップ講師プロデューサー 株式会社web-school.tv代表取締役
大学生の頃よりラジオDJを始め、1998年に大阪人気No.1のFM802主催の新人DJオーディションに合格。その後FM愛知や文化放送でラジオオDJとして10年間活動。番組降板により挫折し不動産投資会社の営業に転職。話し方を武器にさらに営業力を磨き、2年目にトップ営業になる。2008年にはその営業力が認められ倒産寸前だったロープライス眼鏡会社の取締役営業本部長に就任し、当時64店舗から110店舗への躍進を支える。またインターネットカフェ最大手にて社外取締役を歴任。2012年、ラジオ DJ としての話し方の技術、営業力、組織マネジメント力、経営経験などを生かし、組織人事コンサルタント会社のリンクアンドモチベーションにてナビゲーター(研修講師)、ファシリテーターとして活動。大手企業からベンチャーまで年間100件以上登壇、延べ2万人以上の人たちと接する。研修講師の採用や育成の責任者も兼任。新人やマネジメント研修、エグゼクティブへのスピーチ・プレゼン指導、組織活性ワークショップ、働き方改革の為のロジカルシンキング講座などを得意とする。自身の経験から「学びでこの世界を豊かにする」を理念として活動中。著書に『ビジネスマンのためのスピーチ上手になれる本』(同文舘出版)がある。 社会人のための「話し方動画教室オンライン」運営。