健康食品メーカーの事例

健康食品メーカーのフリーダイヤルに、毎日午後3時頃になると電話をかけてくる老人がいた。

用件は商品内容の説明など、他愛のないものだ。まれに、折り返し電話を求められるが、そのときは「夕方以降に電話は寄越すな」と言う。どうやら、家族には電話を聞かれたくないらしい。日中、暇つぶしで電話をかけていることは、ほぼ間違いなかった。

ただ毎月、商品を定期購入しているお客様なので、むげにもできない。
担当者は連日の対応に疲れ果てていた。

そこで私(筆者)は「これまでの通話データを揃えて、相手に断りの返答をする」ようにアドバイスした。

翌日、老人から電話がかってきて、同じような内容を繰り返そうとした。
そこで担当者は、やんわりと断りの意思を伝えた。

「×月×日から今日まで、合計○回、電話をいただいています。1回の電話も×分以上なんです。申し訳ありませんが、次からは一般的なお話には対応しかねます。私としては、商品についてご説明したい気持ちもあるのですが、会社の方針として対応できないんですよ」

(了)

このケースでは、初期対応では禁句である「会社の方針」という言葉を使っていますが、お客様がすでにモンスター化し始めているこの段階では、有効です。

そもそも、相手と話していて「おかしいな」と思ったら、早めにモードチェンジすることが大切です。

「相手の言い分を聞き、なにごともよく話し合って解決を図ろう」というのは、クレーマーとのやりとりでは通用しません。相手の言い分をしっかり聞くことで、いつの間にか相手の土俵に上ってしまう恐れがあるからです。

また、モンスター化したクレーマーに対しては、通話を「細切れ」にすることも効果的です。2時間も3時間もまくし立てるクレーマーでも、たいていは1回の電話で決着をつけたいと思っています。たとえ百戦錬磨のクレーマーでも、2回目の電話をかけるには、それなりに気合を入れなければならないのです。

「途中で電話を切ってもいいんですか?」と質問されることもありますが、むしろ「もう、切らなくてはいけない」というケースのほうが断然多いのです。

断りのフレーズはシンプルです。

「誠に申し訳ございませんが、いま結論を出すことはできませんので、一度電話を切らせていただきます」

まずは、口調は丁寧にしつつも、きっぱり会話を中断します。
それでも相手が無理難題を押しつけるようなら、こう切り返します。

「申し訳ございませんが、私どもではそのようなご要望にはお応えできかねます」

こう言い切って、受話器を置けばいいでしょう。

「話の途中で電話を切るな!」などと、すぐに電話がかかってきたときは

「先ほども申し上げたとおり、私どもではそのようなご要望にはお応えできかねます。失礼いたします」

と言ってガチャン。

これを3回も繰り返せば、相手もかなり消耗しますから、諦めて引き下がる確率はグンと高くなります。

『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』では、こうした電話対応のほか、対面・メールでの正しい対応法、ネット炎上を鎮火させる方法など、クレーマーの終わりなき要求を断ち切る23の技術を余すところなく紹介しています。

ぜひ使い倒していただき、万全の危機管理体制を整えた上で「顧客満足」を追求してください。

※参考記事
目的は「論破すること」。
高齢化で急増する
“シルバーモンスター”の脅威