飲みすぎると「心不全」リスクが心配

(中略)
 とはいえ、コーヒーとの関連性が示唆される健康問題も、ないわけではない。とくに1日2杯以上飲む場合だ。ひとつめはもちろん、中毒性があること。コーヒーを飲み始め、そのことに神経系が慣れてしまうと、やめるのはとても難しくなる。やめると頭痛や吐き気などの禁断症状が続いたり、異様な疲れや落ち込みを感じることもある。身体が適応できる以上のコーヒーを飲めば、刺激過剰になる

 カフェインのとり過ぎは、イライラや頻脈、興奮、不眠、ひどい胸焼けを生じることがある。意外だが、胸焼けはカフェインレスコーヒーでも起こる。焙煎したコーヒー豆に含まれるペプチドが胃の壁細胞に作用して、胃酸の分泌を促すことが胸焼けの原因だ。

 だがいちばん懸念されているのは、コーヒーが、いやそれをいうならすべてのカフェイン含有飲料が、心臓におよぼす影響だ。

 カフェイン入りコーヒーを飲むと、心臓の鼓動が速くなるのは事実だ。しかし心拍数の上昇が心臓の不調を招くことは確認されていない

 ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの循環器疫学研究部門ディレクター、マレー・ミットルマンによれば、カフェイン入りコーヒーが血圧の急激な上昇を招く場合があることは動物実験で示されており、「高血圧は多くの循環器疾患の危険因子であるため、コーヒーは心臓に悪いと考えられてきた。しかしコーヒーを飲んだ直後はたしかに血圧が上昇するが、長期的には健康によい効果があることが、複数の研究からわかっている。コーヒーには、抗酸化物質などの活性成分が多く含まれ、それらが2型糖尿病と、ひいては心不全のリスク低減効果をもたらしているのかもしれない」という。

 ミットルマン博士らは、主に北欧に住む男女14万人を対象とした5件の大規模研究のデータを分析した結果、少量のコーヒー摂取は心不全のリスクにほとんど影響をおよぼさないが、1日4、5杯になるとリスクが増大する可能性があると報告している。

(本原稿は書籍『ハーバード医学教授が教える健康の正解』からの抜粋です。続きは本書でお楽しみください)