6.「知的体育会系」の人材
「知的経営」の生みの親で、一橋大学名誉教授の先生は、
「熟考してから動くのではなく、動きながら考えることも必要でしょう。いわば、頭も体も同時に使う『知的体育会系』になれ」
とおっしゃっていましたが(参照:日経BPネット「変化が激しい時代には『実践知』リーダーが求められる【後編】」)、当社の場合は、「コミュニケーションが取れて、知的好奇心旺盛な人」のことを「知的体育会系」と呼んでいます。
開発部のアントワン・アンドリューは、フランスからの留学生として8年前に来日し、同志社大学の大学院で機械工学を学びながら、当社で研修(アルバイト)をしていました。現在は、正社員として、ロボット技術の開発をしています。
アントワンは、ヒルトップ以外にも日本の大手企業での研修経験があり、「大手企業とヒルトップの大きな違いは、コミュニケーションにある」と述べています。
「ヒルトップの工場見学をしたとき、ちょっと不思議な感じがしたんです。
とにかく、『社員が明るい』と思いました。
それまで私が見てきた日本の大手企業とは、真逆ですね。大手企業の上下関係は、冷たくて暗い印象です。
この会社は、上司とのコミュニケーションがとても取りやすいので、楽しく、明るく仕事ができています」(アントワン)
アントワンが指摘しているように、ヒルトップの社員は「明るい」と思います。
そして何より、アントワン自身、コミュニケーション能力がとても高い。
彼が「楽しい仕事ができれば、日本でも、フランスでも、関係ない」と言い切れるのは、アントワンが
「知的体育会系」の素養を持っているからだと思います。
前に触れた製造部の塚本無我は、京都大学経済学部を8年かけて卒業した異色の人材です。
大学を卒業して実家(九州)に戻り、「地元のスーパーマーケットで経理の仕事でもしようか」と考えていた塚本の気持ちを変えたのは、1本のメールでした。
「就活サイトから送られてきたメールの中に、ヒルトップが紹介されていたんです。
経済学部を出た私に『どうして製造業なのか?』と不思議に思って、『話でも聞いてみようか』と軽い気持ちで返信をしました。
すると、すぐにヒルトップの担当者から電話がかかってきて、『いつ、面接にこれますか? 明日、これますか?』と急かされたんですね(笑)。
私は九州にいましたから、『いや、無理です』と返事をしたのですが、その対応の早さも面白いな、と」(塚本)
後日、面接にやってきた塚本は、「この会社で働きたい」という思いを強くしました。
「面接には、副社長とファクトリーマネージャーがいました。
お二方とも、私の面接だというのに、『今の日本経済はこうだよね』『日本の社会はこれからこうなるよね』と、雑談ばかり(笑)。
午前10時くらいから面接が始まって、お昼すぎまで、ずっと雑談でした。
ファクトリーマネージャーから、『サッチャー政権の支持者の主張についてどう考えますか?』と質問されたときは、私は内心、『製造業になんか関係あるのか? そんな質問、銀行や証券でも聞いてこないぞ』と思っていました(笑)。
けれど、副社長の話が本当に面白くて、『ああ、この人と一緒に働いたら、すごい楽しいやろうな』『自分の専門外なのでどう転ぶかわからないけれど、うまいこと転んだら、退屈しない毎日が待っているかもしれないな』と思えて、この会社で働くことを決めたんです」(塚本)
次回、当社がほしい人材の最後のポイントを紹介しましょう。
今回、年間2000人の見学者が訪れる、鉄工所なのに鉄工所らしくない「HILLTOP」の本社屋や工場、社内の雰囲気を初めて公開しました。ピンクの本社屋、オレンジのエレベータ、カフェテリア風の社員食堂など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事をご覧いただければと思います。