新制度をつくるなど、
多様な働き方の萌芽も

 とはいえ、希望もある。

 前述したとおり、医局に属し、専門医になることだけが医師としてのキャリアではないと考える若手医師も増えているようだ。

 ある産業医によると、かつては現役を引退した医師が担うものと思われていたり、片手間のアルバイトと思われがちだったりした産業医に、健康経営に参画したいという新しいやりがいを求めて、志願する医師も出てきているという。

 岡部さんも「例えば、子育て、介護などの理由により、それまでと同様の勤務内容では勤務継続が困難で無給医となってしまっていた医師のために、短縮勤務制度の有給ポジションとして、准修練医制度を定めた東邦大学の例もあります」と、変わりつつある現場があることを指摘する。

 前述した「医師の働き方改革」に関する検討会の中間発表を受けて、厚生労働省は2月に、医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組みを各医療機関でできる範囲で行うことを求めた。その内容とは、労働時間の管理、36協定の自己点検、長時間労働をしている医師への面談など産業保健のしくみの活用、一部の医師の業務を医師以外の職種で分担するタスクシフティング、女性医師への支援、そのほか当直明け勤務負担の緩和など各医療機関の状況に応じた取り組みである。

 そして、5月28日から6月11日にかけて、取り組みがどのくらい行われているかという調査もなされた。調査に回答した全国の1193病院中、何らかの取り組みをしているのは63%という結果となった。実際にどのくらい進んでいるのかは各病院によっても濃淡があるだろう。

 また、アンケートに答えるだけでは、実効性が薄いという指摘もあるかもしれない。しかし、少なくとも、このような調査が行われ、数字を出さなければならない状況になることで、変わらなければならないといういい意味での圧力にはなるだろう。

 男性医師であれ、女性医師であれ、結婚していてもいなくても、子どもがいてもいなくても、健康に働けることこそが、医師にとっても患者にとっても必要なはずだ。