「寿命といっても、勘違いしてはいかんよ。多くの人は『寿命が伸びる=長生きする』と考えとる。ここには要するに『死をどこまで先延ばしできるか』という観点しかない。しかし、いくら長寿であろうと、病気があって痛みに苦しんだり、ずっと寝たきりならどう思う?」
「私がまだ若いからかもしれないけど、そんなふうにダラダラと長生きするくらいなら、どこかでスパッと病気になって死んじゃったほうがマシかもって考えちゃうわ」
「つまり、よく考えると、人が本当に望んでいるのは健康年齢の長さ、つまり健康寿命が伸びることなんじゃよ」

「健康年齢?」
「そう、病気がなく、健康でいられる年齢じゃ。日本人男性の健康年齢は平均71.19歳、女性は74.21歳(2013年)なのに対し、病気年齢は平均10年ぐらいだと言われる」
「えっ? 平均すると、死ぬ前に10年も病気をしてるってこと!?」

「しかも、われわれの額面上の寿命は今後も伸び続けていくと言われている。ベストセラーになった『ライフシフト』によれば、2007年に生まれた日本の子どもは、50%の確率で107歳まで生きるのだとか。まさに人生100年時代というやつじゃな。
いずれにせよ、そこでカギになってくるが、やっぱりテロメアじゃ。テロメアが長い人ほど、動脈硬化が少なかったという日本のデータもある*。細胞の老化を遅らせることで、糖尿病、がん、心臓病などの慢性疾患にかかりにくくなるんじゃよ。
ひとことで言えば、テロメアは寿命だけでなく、健康年齢とも関係する。テロメアが長いと、健康に生きられる期間も長くなる。寿命が伸びていくいま、現代人は『テロメアのケア』を避けては通れないんじゃ」

* Kido, M., Kohara, K., Miyawaki, S., Tabara, Y., Igase, M., & Miki, T. (2012). Perceived age of facial features is a significant diagnosis criterion for age‐related carotid atherosclerosis in Japanese subjects: J-SHIPP study. Geriatrics & Gerontology International, 12(4), 733-740.