リニア中央新幹線

週刊ダイヤモンド2018年10月6日号第1特集は「新幹線vs飛行機 十番勝負」。ライフスタイルの変化や技術革新により、時間や運賃が中心だった「乗り物選びの基準」は多様化している。週刊ダイヤモンド編集部では、そうした多様化している現状を踏まえ、10の切り口で“移動の覇者”の決着をつけた。“移動の覇者”をめぐる争いは、長らく新幹線と飛行機という2大勢力が軸だった。近年はそこへ、低コストを武器にしたLCC(ローコストキャリア)が加わり、そして今後、リニア中央新幹線がゲームチェンジを狙っている。リニア中央新幹線は総工費9兆円のビッグプロジェクト。死角はないのだろうか。

 昨年行われたインタビューで、葛西敬之・JR東海取締役名誉会長は、本誌の質問を真っ向から否定した。

 リニア総工費9兆円のうち3兆円を、JR東海が財政投融資を使って調達することに疑問を投げ掛けた問いだった。財投で借金が膨らみ破滅した国鉄の二の舞いを演じるのではないか──。

 葛西名誉会長の答えはこうだ。

「まったく違います。財政支出ではなく、借りただけ。東海道新幹線というお財布があるから必ず返済できます。政府にとって、こんな有利な融資先はない。むしろ、政府が要望してきた話です」

 今も実質的なトップとして君臨する葛西名誉会長が主導するだけあって、リニア事業に懸けるJR東海の鼻息は荒い。

 2017年度までに、山梨リニア実験線への投資と超電導リニアの技術開発費に累計6876億円もの巨費を投下した。

 需要予測も強気そのものだ。話が専門的になるが、鉄道業界では、運んだ人数(人)と運んだ距離(キロ)を掛け合わせた「輸送人キロ」が輸送力を測る重要な物差しとなる。

 09年にJR東海が鉄道・運輸機構と共に実施した調査によると、45年のリニアの輸送需要量(東京~大阪)は416億人キロと試算されている。これは、現在の東海道新幹線の547億人キロの8割に迫る数字だ。