アレンジや工夫ができるのは
プロの領域に達した人だけ

3倍の仕事量を質を下げることなくやり抜く「しくみ」水野学(みずの・まなぶ)
good design company代表。クリエイティブディレクター、クリエイティブコンサルタント
ゼロからのブランドづくりをはじめ、ロゴ制作、商品企画、パッケージデザイン、インテリアデザイン、コンサルティングまでをトータルに手がける。
おもな仕事に、相鉄グループ「デザインブランドアッププロジェクト」、熊本県「くまモン」、中川政七商店、久原本家「茅乃舎」、イオンリテール「HOME COORDY」、東京ミッドタウン、オイシックス・ラ・大地「Oisix」、興和「TENERITA」「FLANDERS LINEN」、黒木本店、NTTドコモ「iD」、農林水産省CI、宇多田ヒカル「SINGLE COLLECTION VOL.2」、首都高速道路「東京スマートドライバー」など。著書に『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(誠文堂新光社)、『センスは知識からはじまる』『アウトプットのスイッチ』『アイデアの接着剤』(すべて朝日新聞出版)などがある。

 一度もオムライスをつくったことのない素人が隠し味やふわふわのたまごをつくる余裕などありません。初心者はオムライスのつくり方から把握しないといけないからです。

 プロの料理人はオムライスのつくり方なんてルーティン作業です。目をつぶっていてもできるかもしれません。だからこそ、さらにおいしい究極のオムライスをつくる余裕ができるのです。

 パターン化し、「やることは決まり切っている」と思えば、これから起こりうることも予測しやすくなります。そうすると、何かトラブルが起きたときも、「ああ、こう来たか」と対応できますし、ほんとうに予想外のことであっても、自分の余裕でなんとかカバーできるのです。

 できる限りルーティンを増やし、エネルギーの余裕をつくれば、仕事の質も高まっていくはずです。
(ルーティンについては第2回の連載も参考にしてください)

 ぼくの会社、グッドデザインカンパニーは、世の中に出ているデザインの数が、比率にするとふつうのデザイン会社の3~4倍はあります。それは段取りがいいからだと思っています。

 台湾のセブン−イレブンのディレクションを行なったときも、クオリティを担保したまま、けっこうな量のデザインをしました。  外注はしていません。すべて社内でやったのですが、それが可能なのも「パターン化」を行なったからです。

 基本のレイアウトは、ぼくがつくりました。最初にデザインのフォーマットをつくってしまうのです。最初の「型」に注力しておけば、あとは「パターン」だから楽なのです。

 こうした「パターン化」が可能なのは、デザインにも「ルール」があり「正解」があると考えているからです。

仕事には「答え」がある

 たとえば行送りは「文字の級数×1.6を基本とする」というのが、ぼくのなかにはルールとしてある。また「端から何ミリ」というときは8ミリか12ミリのどちらかという場合が多い。こういったルールを見つけていくと、どんどん効率は上がっていきます。

 ぼくらのようなクリエイティブな仕事こそ「答えがある」と仮定して進めるべきです。そうでないと永遠にやることになります。

 一生懸命やったとしても、自分なりのノウハウやルールを見つけながらやらないと、ただの徒労に終わります。自分なりの法則を見つけられないままやり続けても、10年、20年たっても成長しないのです。