昭和の大スターの心がけ
お寺の掲示板には、有名人の名言がよく採り上げられる傾向にあるようです。
今回は、昭和の大スター、石原裕次郎さんです。お兄さんは元東京都知事で芥川賞作家の石原慎太郎さん。セレブなご兄弟ですが、弟である裕次郎さんは名言録が残るほど、心に沁みる言葉を残しています。
「人の悪口は絶対に口にするな」
「まあ止めておいた方がいいよ、特に本人の目の前では」くらいの受け止め方をするのが普通の人ですが、これを「絶対にするな」と禁ずるのが大スターたるゆえんです。
「十善戒(じゅうぜんかい)」という教えがあります。菩薩としてなすべき10の良い行いをするための妨げとなる、身・口・意の3つが起こす三業(さんごう)に沿った戒めとなっています。
そのうち口(言語)に関するものが4つあります。嘘をつく「妄語(もうご)」、二枚舌を使う「両舌(りょうぜつ)」、悪口を言う「悪口(あっく)」、無益なおしゃべり「綺語(きご)」といった具合です。人の悪口を言ってはいけないは、「不悪口戒(ふあくかい)」に当たります。
言葉を荒げれば敵が増えます
「言葉を荒げれば敵が増えます」という標語もありました。この言葉もまた不悪口戒です。
ある意味、当たり前すぎてシュールな印象すら受けますが、当たり前のことがなかなかできないのも普通の人です。
そういえば、自分の痛いところを他人に突かれると、逆ギレして言葉を荒げることがありますね。今年もいろいろな会見で、言葉を荒げる人をよく見掛けました。
余談ですが、「不悪口戒(ふあくかい)」の教えを歌に乗せて、「ファック」とバンドで叫んでいたお坊さんがいました。そういうシャウトは誤解を生むので止めた方がよいでしょう。
まさに「口は災いのもと」。くれぐれも言葉には注意しましょう。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)