10月中旬に欧州へ出張した際に感じたが、英国の欧州連合(EU)離脱(Brexit)に対する視線において、日本と欧州大陸のEU加盟国の間には大きな違いがある。
欧州の拠点を英国に置く日本企業は多い。日本では合意なしの離脱(ノーディール)が恐れられ、英国とEUはもっと真剣に交渉すべきだという声をよく聞く。だが、欧州大陸のEU加盟国はBrexitへの関心が意外に薄い。主要メディアの報道頻度も(日本人から見ると)低く感じられる。
その第一の理由として、EU側はより悩ましい問題を多々抱えている点が挙げられる。
ドイツでは、難民の統合や地方選挙での与党の敗北、さらには民主主義を揺るがしかねないソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上のフェイクニュースなどが大問題となっている。フランスでは、エマニュエル・マクロン大統領の改革路線が激しい反発を招き、イタリアではポピュリズム(大衆迎合主義)政党の拡張的な財政政策が単一通貨ユーロの枠組みを揺るがす恐れがある。
第二に、英国に対する欧州諸国の愛想が尽き、Brexitを優先して議論する気がなくなってしまっている面がある。
もともと英国は、欧州内の移動の自由を保障するシェンゲン協定やユーロには非加盟という「わがまま」なEU加盟国だった。しかも、EU離脱という極めて重要な問題を国民投票にかけてしまい、51%対49%という僅差にもかかわらず、「離脱は決まった。主権を取り戻す」と騒ぎだした。