ところが、認知的複雑性が低いと、

「そんなこと言ってたの?ひどい!見損なった!」

 などと感情的になり、扇動に乗せられやすい。職場にそんな人が多いと、組織は小グループの対立が生じがちで、雰囲気が悪くなり、モチベーションの低下を招きやすくなる。

 そうした事態を防ぐためにも、従業員の認知的複雑性を高めるような働きかけ、つまり物事にはいろんな側面があること、どんな物事にも長短両面があること、どんな人にも自分と合う面もあれば合わない面もあることなどを理解させるような教育的働きかけが必要だ。

物事は理屈では
解決しない

「なぜこっちの理屈が通じないんだ。何でわからないんだ!」

 と苛つく人がよくいるだろう。なぜなら立場や価値観が違えば正しい理屈は違ってくるということを理解していないからだ。

 例えば、自由競争を奨励し、規制緩和を要求してくる米国による圧力のもと、日本の政府はあらゆる領域において、次々に規制緩和を打ち出す。そのような政策を支えているのは、「自由競争による仕事の獲得や価格形成は絶対的に正しい」といった価値観だ。

 だが、自由競争によって低価格競争が際限なく行われ、価格破壊が企業を追い込むようになると、労働者を低賃金で酷使せざるを得なくなる。すると、自由競争に歯止めをかけなければ人々の生活が成り立たなくなるといった懸念が生じている。

 米国やEU諸国で保護貿易を求める声が高まっているのも、そういった状況によるものといえる。

 そうなると、自由競争が正しいのか、競争はある程度規制すべきなのか、という問題には、どちらが正しいという正解はなく、その場その場のご都合主義で自由競争をすべきだ、競争は規制すべきだ、といった主張がなされていることがわかる。どちらを主張したいかにより、都合の良い理屈を持ち出すわけだ。

 もっと身近なところでも、自由競争を奨励している政府の方針とは正反対の競争の排除が、堂々と行われている。