素人目では判断の難しいルディーの偽造ワイン
実際、私も1934年産のロマネ・コンティの偽造ボトルを日本で見たことがあります。1934年産のロマネ・コンティは、2004年に開催されたドリス・デュークのオークションの目玉として出品され、私は何度も手にして見ていたので、その真贋はすぐにわかりました。明らかにルディーがつくった偽造ワインと同じラベルが使われ、コルクをかぶせるロウの部分は非常に粗末なつくりだったのです。
しかし、実際に本物のボトルを目にしたことがなければ、偽造だと判断するのは難しいでしょう。特に、古いワインのラベルは簡単に模造することが可能です。印刷技術もフォントも複雑ではなく、色あせたような色で印刷をすれば年代物のラベルに見えてしまうからです。
当時のラベルは特別な紙を使用していないため、古ぼけたようにするために何度もヤスリでこすり、古く劣化したワインをわざとラベルにこぼしてシミをつければ、簡単に偽造ラベルが出来上がってしまいます。
コルクについても、古く見せかけたものを使用するか、コルクが見えないようにロウで固めれば素人目にはそれが偽物かどうかはわからないでしょう。本物とフェイクを比べればその違いは明らかですが、偽造ボトルを見ただけで判断するのは難しいと言えます。日本で高級ワインを購入する際は、素人目で判断するのは避けたほうがいいでしょう。信頼できるワインショップで購入するか、もしくはオークションを通して購入することをお勧めします。
ちなみに、この事件により、偽造ワインを販売したオークションハウスも大きく信頼を失うことになりました。その教訓を生かし、今では、どのオークションハウスでも真贋に少しでも疑いがあるものは決して出品を認めないようにしています。
ニューヨークに本社があるオークションハウス「ザッキーズ」では、FBIも認めるワイン鑑定家を雇い、ワインの真贋を一本一本注意深くおこなうほどです。また、空瓶を持ち帰られないよう、飲み干したボトルのラベルに落書きをし、再利用防止にも取り組んでいます。皮肉にも、偽造ワインを流通させたルディーによって、オークションハウスはより信頼できる体制が整えられたのでした。