世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

日本にも流れている
ルディーの偽造ワイン

 前回の記事「被害総額120億円! 全米を揺るがした偽造ワイン事件」で紹介した偽造ワイン事件の被害は、まだまだ拡大しているようです。ルディーがつくった偽造ワインのうち、600億円相当が世の中にまだ出回っていると言われています。FBIによって回収された偽造ワインはごく一部に過ぎず、多くの偽造ワインはいまだに行方がわからなくなっているのです。

 アメリカやヨーロッパではルディー逮捕のニュースが連日連夜大きく取り上げられたため、レアなワインに飛びついていたコレクターたちは、来歴がはっきりしないワインの購入を控えるようになりました。

 そして、行き場を失った600億円相当の偽造ワインはアジアに流れていったと考えられています。中国に大量に流れたと思われたルディーの偽造ワインですが、中国ではすでに自国で粗悪な偽造品がつくられ、素性や経緯が曖昧なワインへの警戒心が植え付けられていました。

 そこで目をつけられたのが日本です。ルディーのワインを偽造だと証言した鑑定家モウリーン・ダウニー女史は、ルディーの偽造ワインが大量に日本へ入ってきていると推測しています。彼女は、偽造ワインに懐疑心が弱い日本のマーケットを心配していました。