「コミュ力」が大事と言われても、どうも会話が苦手という人が増えている。
「自分は口下手だから、話すのは好きじゃない。でも沈黙が怖いんです」
こう悩む人は、実は「雑談上手」になれる可能性が高い人だという。

仕事の業務連絡など、目的や意味のある話ならできるけれど、何気ない会話となると、どうしていいのかわからない。しかも、これからは忘年会などもあり、なれない人たちと仕事以外の話題で「場をつなぐ」機会は増える一方だ。

そんななか、雑談力が今、再び注目を集めている。いまや雑談力は「社会に出てから身につけるべき必須スキル」と言われ、エクセル操作と同じく、学んで身につけるものだという認識が浸透しつつある。

なぜ今、雑談力が必要とされるのか。「コミュニケーションのバイブル」として、多くの人たちに読まれ続けている、シリーズ50万部超えのベストセラー『雑談力が上がる話し方』の著者である明治大学齋藤孝先生が、口下手な人でも会話を広げることができる「質問で返す雑談ワザ」を伝授する。
(まとめ/編集部)

会社員3人で男女の雑談口下手で会話が続かないという人ほど、雑談上手になれる!?

あなたが話し上手である必要など、まるでない

自分は話下手だから雑談は苦手。
そういう人こそ、雑談上手になれる可能性が高いのです。

言い方を換えれば、「相手本位になりましょう」ということ。
雑談は、自分よりも相手に話の主導権を握らせるほうが盛り上がるのです。

ここで言う「主導権を握らせる」とは、自分の話ではなく相手から話題を引き出すということ。
つまりあなたが話し上手である必要など、まるでないのです。

それよりも大事なのは、相手から出てきた言葉に、「質問」という形で切り返す力です。
これだったら、「聞き上手」でない人でも、すぐに実践できるでしょう。

いや、これをやるだけで、聞き上手に変身してしまいます。
だまされたと思って、一度試してみてください。

犬を飼っている人との雑談を成立させるには

齋藤 孝(さいとう・たかし)
1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション論。テレビ、ラジオ、講演等、多方面で活躍。
著書は『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』『コミュニケーション力』(岩波新書)、『現代語訳 学問のすすめ』(ちくま新書)、『質問力』(ちくま文庫)、『語彙力こそが教養である』(角川新書)、『雑談力が上がる話し方』『雑談力が上がる大事典』『会話がはずむ雑談力』(ダイヤモンド社)など多数ある。撮影/佐久間ナオヒト

たとえば犬の話題が出たとします。
「ウチには犬が1匹いるんですよー」
こう振られたらどうしますか?

「ウチでも最近、犬を飼い始めましてね」
という“自分の話”ではなく
「おたくのワンちゃん、種類はなんでしたっけ?」
と、“相手からの答え”を引き出せるように、
相手本位のスタンスで話しかけるのです。

自分の話をする場ではないと割り切って、
相手の話に質問をつけてひたすら返していく。
これだけで話は確実に盛り上がります。

相手の話に、質問というエサをつけた相づちを打つ。
そのエサに相手が食いついてきたら、さらに次の質問をする。

自分が主体で話をしなくても、雑談は見事に成立します。
ここでは話題が豊富とか、おしゃべりが好きとか、話し方が上手といったことは関係ないのです。

人間、自分が好きな物事について話を振られると、
そのことについて語りたくなる
もの。
そうすれば、否が応でもその雑談はダーッと盛り上がります。

「で、あなたは?」と振られてから、
自分の話をすればいい

いくら自分がうまく話をしようと思っても、
相手がその話に食いついてくるとは限りません。

それこそ「興味がない」と会話が終わってしまう可能性もあります。
絶対に外さない話題というのは、相手の興味のある話なんですね。

で、ひととおり話し終えたあとに「で、あなたは?」と振られたら、
そこで初めて「ウチでも最近、犬を飼い始めましてね」とすればいい
のです。

雑談という言葉から、「積極的に自分の話をしなくてはならない」と、
必要以上に気負ってしまう人がいますが、その必要はまったくありません。

むしろ相手が楽しくおしゃべりできるよう、
相づちを打ちながら質問を投げかけていけば、自然と会話は続きます。

相手が気持ちよく話をしてくれれば、
たとえ、あなたがほとんど話していなかったとしても、
コミュニケーションとしてはちゃんと成立している
というわけ。

そう、話し下手な人ほど、雑談の潜在能力は高いのです!