世に「ぜいたく病」とやゆされ、同情どころか、からかうネタにされかねない痛風。
ところが痛風の原因である高尿酸血症は、食生活より遺伝子変異の影響の方が大きいことがわかってきた。
ニュージーランド・オタゴ大学の研究者らは、米国の五つの集団研究から痛風と食生活、遺伝子変異との関連について統合解析を実施。対象は、18歳以上のヨーロッパ系米国人1万6760人(男性8414人、女性8346人)で、腎機能障害や痛風の病歴を持たず、高尿酸血症の治療薬や利尿薬を飲んでいない人々だ。
血中尿酸値と遺伝的なプロフィル、そして食生活との関連を分析した結果、血中尿酸値の高さに関連する食べ物として、ビール、リキュール類、ワイン、ジャガイモ、家禽類(鶏肉など)、ジュース類、肉類(牛・ブタ・ラム)の7種類が特定された。
しかし、これらの食品単独での血中尿酸値への影響は、1%にも満たなかったのである。多少なりとも影響が認められたのはビールなど酒類だった。
ちなみに血中尿酸値を下げる食べ物は、卵、ピーナツ、シリアル、スキムミルク、チーズ、全粒粉のパン、マーガリン、非かんきつ系の果物だったが、こちらの影響度も1%未満だった。
対照的に、高尿酸血症をもたらす遺伝子変異の影響は、23.9%とはるかに大きいことが示された。研究者は「高尿酸血症は食事より遺伝子変異の影響によることを示した初めての試験」としている。
尿酸に関係する遺伝子変異は、一つ一つの影響は小さいが、発現頻度が高いものが多い。日本人の例では、20代の若さで痛風を発症する人のおよそ9割が、尿酸を体外に排出する輸送体の「ABCG2」に遺伝子変異を持つ。変異による排出機能の低下から、20代以前の痛風リスクは正常な人の二十数倍、全年齢を通じても3~10倍は高いといわれている。
痛風持ちでも食べ物にあまり神経質になる必要がないのは朗報だが、2親等以内の血族に痛風患者がいる方は、まず大量飲酒を避け、薬物療法も視野に入れたい。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)