今回紹介するのは、東京で開講されている夜間のMBAプログラムである。筑波大学大学院ビジネス科学研究科国際経営プロフェッショナル専攻は、2005年4月に同大学の東京キャンパス(大塚地区)に設置された。
比較的新しい専攻でありながら、国内外で注目されるMBA。その原動力となっているのが、そもそも社会人向け大学院のトレンドを牽引してきた筑波大学が遺憾なく発揮する構想力と実行力である。国立らしからぬフットワークの軽さが、アカデミックな実力の高さと交錯する。
講義のほとんどは英語(全ての必修科目と選択科目のおよそ3分の2)で行なわれ、教員の半数近くが大学院教員で、留学生も数多い(平成20年度で専任教員の4割が外国人、4分の1が留学生)。言ってみれば、海外のビジネススクールに留学するのに最も近い環境の、国内のMBAプログラムである。
しかもこの大学院は夜間開講。留学どころか、退職の必要もなく学ぶことができる。実務経験の比較的短い社会人を対象としており、ステップアップを望む若手には最高の選択肢といっていいだろう。カリキュラムの最後に配置される3ヵ月間の実習科目は、企業内プロジェクトでもいいが、海外インターンシップとすることもできる。
取得できる学位は『国際経営修士(専門職)』。とはいえプログラムの通称ともなっている英文の学位名『MBA-IB』のほうがはるかに実感にあう。IBは言うまでもなくインターナショナル・ビジネスの略である。
将来の国際経営の中枢を担う3タイプのプロフェッショナルマネジャー=「ビジネスマネジャー」、「カントリーマネジャー」、「ファンクショナルマネジャー」の養成を目指している。一般的にビジネススクールの基盤である(1)組織経営、(2)事業戦略領域に、 (3)国際対応、 (4)応用情報を加えた4領域の学際的アプローチを採る。
海外や国内の他のビジネススクールと一線を画すのは、勤務先からの受験承諾書等の提出は必要なく、勤務先からの派遣制度も採らないこと。会社に告げることなく入学し、自腹で学費を調達する。自己責任で学ぶスタイルは、筑波大学の東京キャンパス、社会人向け夜間大学院の伝統である。
入学選抜は出願書類の審査、英語能力の審査、口述試験。出願書類にはビジネスプロジェクトの実習計画等を記した『エッセイ』、出身大学の成績、推薦状等が含まれるMBAスタイルだ。口述試験では、受験者の職業経験、出願動機、分析・コミュニケーション技能、将来へのビジョン等を評価。TOEFLかTOEICいずれか、もしくは両方の試験結果を提出することと、面接試験が英語で行われることがポイントだ。
学費は国立らしく抑えられ、2008年実績で81万7800円(入学金28万2000円; 初年度授業料53万5800円)。これだけの内容とレベルのMBAを海外留学して受講するのであれば、数倍~十数倍のコストになることは自明である。
年単位・学期単位・月単位で可能な休学のシステムも注目。海外留学よりもよほどフレキシビリティが高い。あらゆる意味で、海外MBA留学のオルタナティブとなり、さらに高い成果を期待できる大学院である。