『嫌われる勇気』と
『幸せになる勇気』の関係

――教師になった青年が描かれているのが『幸せになる勇気』ですが、『嫌われる勇気』を読んだところで止まっていらっしゃる方も多いようです。あらためて『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の関係を教えてください。

アドラー心理学の入門書『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』の著者・古賀史健古賀史健(こが・ふみたけ)
ライター/編集者。1973年福岡生まれ。1998年出版社勤務を経てフリーに。現在、株式会社バトンズ代表。これまでに80冊以上の書籍で構成・ライティングを担当し、数多くのベストセラーを手掛ける。臨場感とリズム感あふれるインタビュー原稿にも定評があり、インタビュー集『16歳の教科書』シリーズは累計70万部を突破。20代の終わりに『アドラー心理学入門』(岸見一郎著)に大きな感銘を受け、10年越しで『嫌われる勇気』および『幸せになる勇気』の「勇気の二部作」を岸見氏と共著で刊行。単著に『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がある。

古賀 『嫌われる勇気』は、編集の柿内芳文さんと僕が一緒に岸見先生のところを訪ねて、悩んでいることや、長年考えてきたこと、疑問に思ってきことをどんどんぶつけていきながらつくった本です。本に書かれているようなやりとりが実際にあって、だから青年の悩みが詰まった本だと思います。
『幸せになる勇気』は、その青年が少しだけ大人になって、テーマは教育や結婚、愛といったもう一つ上の段階という感じですね。自分自身が成長した後に、さらなる幸せをどう追求していくかが語られています。
 少なくとも書き手である僕にとっては、自分の成長とすごくリンクしている本なので、順番としても、『嫌われる勇気』をまず読んでいただき、ある程度の理解を得てから『幸せになる勇気』を読んで欲しいと思います。

岸見 アドラーの思想を俯瞰する地図のようなものとして『嫌われる勇気』を位置づけると、『幸せになる勇気』はコンパスと言えます。地図を見ているとだいたい自分がどこに向かうべきかがわかる気がします。しかし、いざ目を上げると、目の前に思いも寄らぬ光景が広がっていて当惑することがありますよね。どちらに足を一歩踏み出せばいいのか、それを知るためのコンパスとして『幸せになる勇気』を是非読んでいただきたいです。『嫌われる勇気』だけでは十分ではなく、『幸せになる勇気』と合わせて初めて完結するとお考え下さい。
 また、想定し得るあらゆる疑問を『幸せになる勇気』では青年が哲人にぶつけています。これは『嫌われる勇気』を読んだ皆さんが、ご自分のアドラー理解度をチェックするうえでも非常に有効だと思います。

古賀 第2弾の本というのは、通常だと1冊目の内容をより具体的にするとか、より実践的にする方向に行くことが多いと思います。そうではなく、アドラー心理学をより深く掘り下げたのが『幸せになる勇気』なのだと思います。