孫泰蔵さんにもインタビュー
「予想のできる未来なんてつまらない」

 だが、本書は単なるエストニアの紹介にとどまらない。筆者なりに、日本の課題について章ごとに考察した。孫さんが「未来の社会をダントツに先取りしている」と評するように、エストニアで課題解決のヒントをたくさん見つけることができた。

 たとえば、「機械に仕事を奪われても食べていけるにはどうするのか」、「優秀な人材を世界から集めるにはどうするのか」、「都市と地方の格差を埋めるにはどうするのか」、「グーグルやアップルのような企業をどうやって生めばよいのか」等だ。

 少子高齢化や低成長の経済、硬直化した社会構造に時代遅れの教育など、日本では若者を中心に強い閉塞感が漂っている。ちまたにあふれる「日本の未来予測」に関する書籍やレポートの多くは、悲観的な物語ばかりだ。

 こうした将来への暗いイメージが個々のマインドに大きな影響を与え、チャレンジする意欲を失わせ、新たな価値を生む活動機会を奪っている。孫さんは「そんな予想のできる未来や楽しみのない未来を描いても、つまらなくはないでしょうか」と投げかける。

 それでは、反対に「つまらなくない未来」とは何なのか、そして新たな時代を個人はどう生き抜けばいいのか。本書では、エストニアの現地取材を通して見つけた数々のキーワードから、「つまらなくない未来」と、その描き方をお伝えする。