「自分のことしか考えていない人」は、天狗になって失敗する

飲食業界で活躍する新田社長(仮名)は、のれん分けにより、「11名」の経営者を輩出しています。この11名は、全員「年収2000万円」を超えていますが、11名のうち8名は、独立したとたん、「年収2000万円で止まってしまった」そうです(なかには、年収が下がった人もいます)。

一方、残り3名は、独立後もさらに成長を続け、年収を増やしています。「成長が止まった8名」と「成長を続ける3名」の差は、どこにあるのでしょうか。
新田社長は、「成長が止まったのは、『自分』だけが満足してしまったから」と、おっしゃっていました。

「この8名は、経営者になったとたん、努力を怠り、基本を忘れ、素直さを失い、人の話を聞かなくなった。簡単に言うと、『天狗』になったということです」

天狗になったのは、「自分のこと」しか考えていないからです。自分のことしか考えていなければ、自分が満足した時点で、成長する理由がなくなってしまいます。すると、仕事以外の別のことに関心がいってしまうわけです。

ですが残りの3名は、経営者になっても驕らず、初心を忘れず、努力を続けています。
努力を継続できるのは、「自分のまわりにいる人」を目標の対象にしているからです。
彼ら3人は、「まわりの人と一緒に幸せになりたい」「まわりの人の成長に手を貸したい」という与える姿勢を持っていました。だから、「自分だけの努力」にとどまらず、2倍、3倍の努力ができるのです。

石井竜治は、その1ミリたりともブレない素直さを買われ、入社2年で「FCオーナー」としての独立を認められました。入社2年での独立は、「EARTH(アース)」最速です。

ところが彼は、オーナーになると人が変わってしまいました。自分の基準でしか物事を判断せず、事務仕事を優先しすぎて最優先すべき「現場」にも顔を出さず、かなり厳しく社員に仕事を命じるなど、行きすぎた指導も目に付くようになりました。
彼は「24時間、一睡もせずに、朝も昼も夜も夜中も、チラシを配り続けた」という伝説を持つほど自分には厳しい一方で、自分のやり方を押し通す一面もあったのです。

そこで私は、最も赤字で大変な店舗を彼に任せてみることにしました。「赤字店を立て直す」という経験の中から、初心である素直さを取り戻してほしいと思ったからです。
結果的に、彼は、完全に復活しました。「自分の背中を見せないと 部下は育たない」ことを悟り、経営者にとって、非常に大切な「素直さ」を取り戻したからです。

その後の彼は、「問題のある店舗」を任せると、誰もが嫌がることもすべて引き受け、ことごとく優良店へと再生させました。彼は、「EARTHの最高基準」を継承し、360度どこから見ても本物で信頼が厚く、スタッフの成長のためなら火の中に飛び込む姿勢なので部下がついてくるのです。いまや石井は、10店舗の「FCオーナー」となり、年商10億円、フェラーリ430スパイダーに乗り、常に自ら最前線に立ち快進撃を続けています。

自分だけの目的や目標しか持っていない人は、折れやすく不安定で脆くなりがちです。
ですが、「他人(身近にいる人や大切な人)のために」という発想をプラスすることで、揺るがない基盤ができあがります。そして、努力を継続できるようになります。

他人を背負っている人は、自分が折れたとたん、他人も巻き添えにしてしまうことがわかっています。だから、少々のことではへこたれません。たとえば、「30万円の月給のうち、毎月5万円ずつ、実家で暮らす年老いた母親に仕送りをする」という目標を立てたなら、そう簡単には引き下がれないはずです。

目的や目標を立てるときは「自分+他人(身近にいる人や大切な人)」で考える。「協力者」と一緒に利益を上げるという発想を持てば、仕事も利益も安定するのです。