これは一言でいえる。
世界の共通語にもなっている「カイゼン」である。
今日より明日をよくする
前向きな発想
「カイゼン」はトヨタの哲学や文化を表すキーワードであり、社員一人ひとりの心の底に根づき、日々の力の源泉となっている絶対的なキーワードだ。
世界中で働くトヨタの社員は、入社と同時にカイゼンの精神を叩き込まれ、以降、実際の仕事を通してカイゼンの何たるかを頭と身体で学び取っていく。頭と身体に染み込んでいく哲学は、ごく自然にそれぞれの人生観にも影響を及ぼしていく。
誰もが同じ人生観を持つようになるということではない。あくまでも影響を及ぼすのであって、宗教のように全員が一つの人生観や世界観に結集し、そこから一歩も外に出られなくなるような染まり方をするわけではない。
どう影響されていくのかといえば、「どうしたら自分の人生をより楽しく、より充実したものにしていくか」「今日の自分と明日の自分は違う。明日の自分は今日の自分よりよくありたい」という前向きな発想で物事を考えるようになるのである。
そして、ここが肝心なところだが、カイゼンの哲学が身体に染み込んだトヨタの社員は、常に目の前に横たわる「問題」を見つけ、問題を永遠に除去するために、その問題を引き起こしている「真の原因」は何かを考える。トコトン考える。
そして真因を突き止め、問題を引き起こしていた原因の除去に立ち向かっていく。ここも自分の頭でトコトン考える。
真因の発見から問題を解決するまで自分の問題として捉え、自分の頭で考えるから、いつの間にかカイゼンの精神が頭と身体に染み込み、自分の人生観を前向きに変えていくことにもつながっていくのだ。
徹底して自分の頭で考える訓練ができているから、人に影響される面は少ない。会社であるから、上司の指示や命令に従って動く面もあるし、好き勝手なことはできないが、常に上司の指示を待ってからしか動けない人間にはならない。