私が、「予約をとらずに駅に来た人は、そのまま不正乗車できてしまうのでは?」と答えたところ、車掌は、手元にあるハンディターミナルを見れば、どの席が空席かはわかるし、駅と駅の間の区間が長いので、不正乗車が分かれば走行中の列車から逃げることはできない。確かに不正乗車はゼロではないが、取り締まることはできるし、ある「かも」しれない不正を防ぐために、すべての駅に改札を設け、高額な改札装置を設置し人員を置くのはコストのムダだと説明しました。
私は、なるほど、「駅務の自動化」を突き詰めるとこういうことになるのかと思いました。高度に機械化された改札装置を各駅に設置するのではなく、車掌に使いやすい端末を持たせて、全駅の改札を廃止してしまう。非常に合理的です。
一方、日本の場合は、情報化・コンピュータ化によるコスト削減というと、まっさきに人員削減を考えます。つまり、人を減らして機械で置き換えていく方法をとろうとするのです。しかしこれでは、いくら機械を安く作っても「そもそも機械を設置しない」のと比べればコストはかかります。サービスの品質が上がったりお客様にとって便利になったりというメリットもありません。
固定観念にとらわれ、「今あるものをどう変えるか」という発想で考えるのではなく、ゼロベースで業務プロセスそのものを変えるという発想の方が、コスト効果が高く、かつ、サービス品質やお客様の満足度も高まることが多いのです。情報化の本質とはここにあります。
我慢強い消費者が、真の情報化を遅らせている
もう1つ、青森に行ったときのエピソードをご紹介しましょう。
私は市行政の情報化について、青森市の職員としてアドバイスを行う情報政策調整監の役職にあるため、頻繁に青森を訪れます。昨年の冬に青森に行き、飛行機で東京に帰ってこようとしたときのことです。午後7時ごろの飛行機に乗るはずが、雪のために出発が1時間遅れるとのアナウンスがありました。空港で待たされ、8時ごろにようやく搭乗できたのですが、機体に雪が積もったという理由でそのまま30分待たされました。
その後も、滑走路に雪が積もったので除雪作業のために30分、そしてまた機体に雪が積もったので30分……と、結局離陸は午後10時すぎになったのです。しかしその時間だと、羽田空港に着いても電車は終わっていて、自宅に帰ることができません。機内で客室乗務員に聞いたところ、「羽田空港に着いてから地上係に聞いてください」と言われました。