全員の「スキル」を可視化する
同時にマネジャーは、もうひとつの「属人化」の原因を解決する準備を始める必要があります。
もうひとつの原因とは、すでに触れたように、メンバーの「スキル不足」という問題です。「属人化」を解消しようとしても、他のメンバーがその業務を担当できるだけの資格・免許・スキルが不足していれば、手の打ちようがないからです。
この問題に対処するには、まず現状を把握する必要があります。そこでおすすめのツールが「スキルマップ」です。
まず、下図のように、チームの業務を進めるうえでどのような経験、知識、資格などのスキルが必要となるかを書き出します。そのうえで、各メンバーのスキルを「◎○×」や「点数」で記入していきます。この「スキルマップ」をつくることで、「チーム内に不足しているスキル」「属人化解消のために必要なスキル」を可視化して、「メンバーの育成計画」を立てる材料にするわけです。
ちなみに、図のなかにある矢印は、どのメンバーがどのメンバーにスキルを伝達するかを示したものです。このように、「スキルマップ」上でメンバー同士の組み合わせを検討すると、具体的にどのようなアクションをとればいいかイメージが湧きやすいでしょう。
「スキルマップ」は、メンバー全員でつくるのが理想的です。
「カエル会議」などで、メンバー全員で「スキルマップ」を作成しながら、「このスキルは誰かに教えることができるレベル」「このスキルは習得中で、誰かに聞きながらできるレベル」「このスキルは未習得」など、一人ひとりが現在のスキルを自己診断していくのです。
そして、「自分がこのスキルを身につけたら、○○さんの業務負担を減らすことができるかもしれない」「いまのチーム状況を考えたら、私のスキルを○○さんに教えるといいかもしれない」などと、「チーム内の業務分担を適正化する」「チーム全体の実力を向上させる」という視点でディスカッションするのです。
その後、マネジャーが、一人ひとりのメンバーと「1対1ミーティング」を行い、内容を確認しながら目標に向けた具体的な取り組みを確定させます。さらに、「カエル会議」や「1対1ミーティング」などの場で定期的にスキルアップの達成度をチェック。新たな「スキルマップ」を作成して次のステップに進むというサイクルを回していくわけです。
あるディベロッパーでは、全員で「スキルマップ」をつくり、そこに「資格取得」という項目を設けました。そして、メンバーに資格取得のための勉強や経験の機会を設けるよう働きかけた結果、大幅に資格取得者が増加。有資格者でなければできない業務を担当できるメンバーが増えたことにより、「属人化」の度合いを下げることに成功しました。
マネジャーにとって重要なのは、メンバー一人ひとりのスキル状況を把握して、「誰に」「どのスキルを身につけてもらうか」を考えること。それこそが、「チーム全体のスキルアップ」につながり、「属人化」問題の解消につながっていくのです。