制度設計時には
グローバル化は想定外

 また、日本の医療保険制度では、高額な医療を受けても一定以上の負担については保険者から払い戻しを受ける「高額療養費制度」がある。治療目的の滞在は、医療滞在ビザで自費負担となるが、保険を利用することで、高額な医療費を低い負担で利用できることから、あっせんする業者が存在するという報道も一部にある。

 2017年、厚生労働省が公表した調査結果によると、保険証取得から半年以内に80万円以上の治療を受けた外国人のレセプトは、1年間で1597件あった。

 もっとも、この中で医療目的であることを隠して保険証を取得したケースはほとんどないと報告されている。当然ながら、多数の外国人就労者、留学生が正当な目的で来日しているケースでは、日本人と同等の健康保険に加入して、保険料を支払っているからだ。

 とはいえ一方で、日本の医療保険制度がグローバル化に対応しきれていないのも事実だと、堀氏は指摘する。

「国民健康保険は戦前につくられたもので、被用者保険のルーツにいたっては大正時代にまでさかのぼります。国民皆保険になったのは1961年と、すでに50年以上たつ制度で、当時はグローバル化の進展を想定していませんでした」

 人口減少が進行する中、外国人観光客、外国人労働者の増加や、2010年6月から国が推進している、外国人患者を積極的に受け入れることが目的の「医療ツーリズム」などの影響で、日本の医療サービスの良さが海外でも知られるようになっている。外国人であれ日本人であれ、適正にサービスを利用するのはまったく問題がない。

 現状、明らかに不正というケースは少なく、経時的損失も深刻な状態ではないとされる。だが、堀氏は、将来的に不適切な事案が増えていけば、制度の信頼性を損ねる可能性があるとした上で、こう語る。

「やはり、被保険者の支え合いで成り立つ社会保険において、不正加入や不適切な利用が生じ得る潜在的なリスクが制度にあるならば是正すべきです。性善説に立って、このまま放置しておいてしまうと、将来的には制度の根幹を揺るがすような問題に発展するかもしれません」