180度転換のイノベーションは
一朝一夕では成し遂げられない

 ロティーナ監督が前面に打ち出した現実主義がリージョ監督の理想を封じ込めた構図の中で、ビジャも後半途中から運動量が激減した。イニエスタは5月に35歳、ポドルスキは6月に34歳になる。37歳のビジャを含めて、高温多湿の夏場に顕在化してくる年齢的な問題も抱えている。

 セレッソ戦で送り出した布陣が現時点におけるベストなのか。ビジャを真ん中で起用し、ポドルスキをその背後でイニエスタと並べる形も考えられる。しかし、その場合は両タッチライン際で相手に与える脅威が消滅し、目指しているポゼッションスタイルから後退しかねない。

「築き上げてきたスタイルに磨きをかけて、強いだけではなく、お客さんを魅了するサッカーを追求していきたい」

 今シーズンの目標をこう掲げていた三木谷オーナーはセレッソ戦後に、厳しい表情でロッカールームへ直行した。25日には6人目の外国籍選手として、ブラジル人のDFダンクレーの加入が決まった。昨シーズンからの懸案だったセンターバックの補強も終えた点からも、本気度が伝わってくる。

 もっとも、リージョ監督の経歴を見れば、ここ20年間は就任から短い期間で解任される軌跡が繰り返されていることが分かる。理想を追い求めるあまりに結果が伴わず、業を煮やしたチーム側と衝突を繰り返してきたからだろう。

 スタイルを180度転換させるイノベーションは、一朝一夕には成し遂げられない。難易度が極めて高い「バルセロナ化」となれば、なおさら我慢を重ねる時間も必要となる。チーム全員の思いを代弁する形で、ビジャもセレッソ後にこう語っている。

「僕たちは多くの時間でゲームをコントロールする展開を前提として、チームを構築している。自分たちのアイデンティティーやサッカーの姿勢は、このまま信じるべきだと思っている」

 他のJクラブの追随を許さない莫大な先行投資の下で、新生ヴィッセルは船出した。これからも理想と現実の狭間で航路が揺れるだろう。その時に目の前の結果に一喜一憂することなく、いかにして前者へ舵を切っていけるか。三木谷オーナーをはじめとする、クラブ全体の覚悟が問われてくる。