ボストンコンサルティング社長として名を馳せたビジネス界きっての読書家が、どう読書と向き合ってきたか、何を得てきたか、どう活かしてきたかを縦横無尽に語り尽くす。
自分を高める教養と洞察力が身につき、本を武器に一生を楽しむ、トップ1%が実践する『できる人の読書術』を説き明かす。
二流から一流に脱皮するために求められるのは「教養」だと言った。
まずは、そこから掘り下げていこう。
かつて教養を学ぶのは、支配階級の特権であった。
ごく一握りの人間たちが、古典を解釈する「文献学」などを極めていた。
教養とは何か。
ひと言で答えるのは難しい問いだが、あえて言うなら、
「知識」から絞り出される「知恵」のようなものだ。
知恵とは、物事の本質を見通して分析する能力。
教養とは、幅広い知識を自分なりに知恵として昇華させたものである。
英語で知恵は「wisdom」(ウィズダム)、知識は「knowledge」(ナレッジ)という。
知識がないと知恵は出てこないが、
知識があるからといって必ずしも知恵が出てくるわけではない。
そこが教養の難しいところである。
中世末期以降のイギリスでは、地位と財産、
それに教養を持つ有閑層は「ジェントルマン」と呼ばれていた。
一流と呼んで差し支えない存在である。
その頃のイギリス国王ジェイムズ1世に、伝手をたどって謁見したある人間が、
「うちの息子をジェントルマンにしてください」と頼んだという逸話がある。
それを聞いてジェイムズ1世は、こう答えたそうだ。
「貴族にすることはできるが、ジェントルマンにすることは神にもできない」
つまり、貴族のように地位と財産があっても、教養がなければ、
神に近い存在である王様でもジェントルマンにはできないと諭(さと)したのである。