ネット検索で満足していては
二流止まりになる

読書をインターネットと同じように、
単に情報や知識を得るための手段だと勘違いしている人も少なくない。
挙げ句の果てに、ネットならすぐに情報が得られるのに、
本だと時間がかかるので非効率だと否定する。とんでもない勘違いだ。

いくらネット検索をしてみても、情報や知識が手っ取り早く得られるだけで、
いつまで経っても考える力は養われない。
その昔は、物知りで“歩く百科事典”などと呼ばれる人が、
周囲に1人か2人はいたものだ。
打てば響くように何でも答えてくれるから、
歩く百科事典は、みんなからありがたがられた。

現代ではネットが普及して、検索エンジンで気になるワードを検索すれば、
情報や知識だけなら一瞬で得られてしまう。
そのため、歩く百科事典の価値は大暴落して、
その言葉自体が死語になってしまった。
いまさら情報や知識の量を誇っても仕方がない。

ネットの検索エンジンは、見方を変えると
電子化された巨大な辞書や百科事典のようなものだ。
辞書や百科事典を「あ」の項目から順番に読んでも、
賢くなったり、ものを考える力が高まったりはしない。
せいぜい博覧強記になるくらいのものだ。
それと同じで、ネット検索で情報や知識を得て満足しているようでは、
二流止まりなのである。

検索エンジンで検索した情報に目を通して、
そこで気になるワードをまた検索エンジンに入れて検索する……。
そんなネットサーフィンをしているうちに、時間はあっという間にすぎてしまう。
ネットサーフィンに費やしている時間は、1日平均60分という報告もある。
そんな時間があったら、読書をしたほうが自分のためだ。

ネット検索が止められない人は、
意図的に“ネット断ち”をする時間を設けてはどうか。
朝起きて会社に着くまで、あるいは夕食後は
最低限のメール以外はインターネットを使わず、ネット検索もしないと決める。

そうして生まれた時間を読書にあてると、
文庫本や新書ならば数日に1冊くらいは読めてしまう。
ネット断ちとネット検索NGの日を週に3回も設けたら、
それだけで月3~4冊ペースで読書ができる。
その習慣は、考える力と洞察力を確実に引き上げるのだ。

堀 紘一(ほり・こういち)
1945年兵庫県生まれ。東京大学法学部卒業後、読売新聞経済部を経て、73年から三菱商事に勤務。ハーバード・ビジネススクールでMBA with High Distinction(Baker Scholar)を日本人として初めて取得後、ボストンコンサルティンググループで国内外の一流企業の経営戦略策定を支援する。89年より同社代表取締役社長。2000年6月、ベンチャー企業の支援・コンサルティングを行うドリームインキュベータを設立、代表取締役社長に就任。05年9月、同社を東証1部に上場させる。現在、取締役ファウンダ