この際にヒントになるのが、VAKモデルという考え方だ。

これはVisual(視覚の)、Auditory(聴覚の)、Kinesthetic(体感覚の)という単語のイニシャルからとったもので、NLP(神経言語プログラミング)心理学の世界などでしばしば言及される概念である。人は五感を通じて知覚を行っているが、とくにどの感覚を優先的に使っているかは個人によって異なり、Visual型/Auditory型/Kinesthetic型という3つの類型があるとされている。

たとえば、感覚の代表システムが「視覚優位」である人は、目で見る学習をすると効率が高かったり、「話のポイントが見えてきました」「そこに焦点を絞りましょう」といった視覚言語を多用したりする傾向がある。

他方、「体感覚優位」の人であれば、実際に手を動かしながら学ぶことに向いており、会話などでも「この広告はツルッとして引っかかりがないですね」「その話はズバッと刺さりました!」など体感覚に関わる言葉がよく登場する。

これと同様、プロトタイピングによって具体物をアウトプットしたら、それをVAKの観点からそれを言語化してみるといい。そうすると、自分がとくにどのモードで世界を知覚しているかが見えてくるはずだ。

僕はこのモデルを研究するなかで、とくに新しいものを生むためには、「何か世の中の“あたりまえ”に違和感を感じる」とか、「なんとなく気になる」いう直感的な体感覚(Kinestheticモード)からはじめ、自分なりのアイデアを具体的なイメージとして描く視覚(Visualモード)に移り、最後にそれに呼び名をつける(Auditoryモード)という順序で考えることが自然ではないか、という仮説を持っている。

直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN感覚にフォーカスするVAKモデル

実際、小さな子どもは、新たに言葉を覚える際にこの流れをたどっている。すべての感覚に優れている必要はないが、ほとんどが「言葉の世界」だけで完結してしまうことが多い仕事環境にいる人は、バランスのよいVAKの活用がブレークスルーのきっかけになるだろう。

デザイン思考の特徴(3)
生活者の課題をみんなで解決する―人間中心の共創

デザイン思考の3つめのポイントが、「人間中心の共創プロセス」という特徴である。

考えるというのは、ある意味では「孤独な作業」であるというのがかつての常識だった。しかし、プロトタイピングからスタートするデザイン思考では、第三者にも「思考内容」が可視化されるというメリットがある。