それに対する僕なりの答えが、『直感と論理をつなぐ思考法』で論じた「ビジョン思考」という方法だ。

ビジョン思考とは、独自の「妄想」をプロジェクトや事業、アート作品へと落とし込んでいる人々(いわゆる「ビジョナリー」)が無意識にやっている考え方(=ビジョン思考)をモデル化してみたものである。

人が「自分らしい思考」を
喪失する4つの原因

この思考は4つのステップを基本サイクルとしている。

「妄想」「知覚」「組替」「表現」という4つのステップは、僕たちが「自分モード」で考えられなくなる4つの典型的な原因を、それぞれ解消してくれる。

「直感」を駆動力にした思考は、このサイクルを描く

裏を返すなら、「自分モードの思考」を取り戻すうえでは、次の4つのミッシングリンクを埋めることが必要なのだ。

[1]内発的動機が足りない―妄想(Drive)
[2]インプットの幅が狭い―知覚(Input)
[3]独自性が足りない―組替(Jump)
[4]アウトプットが足りない―表現(Output)

それぞれについて見ていくことにしよう。

【自分モードを失う原因[1]】内発的動機が足りない

僕たちの日々の仕事や生活は、「やらなければならないから、やっていること」で占められている。

逆に、「やりたくて、やっていること」は、果たしてどれくらいあるだろうか? 明らかにその割合は少ないはずだ。

もっと言えば、何が「やりたいこと」で何が「やりたくないこと」なのか、「なぜ」自分がそれをやっているのかすら、よくわからなくなっている人もいるだろう。そういう状況では、そもそも「自分モード」で考えたくなるモチベーション、内発的な動機が生まれようがない。

【自分モードを失う原因[2]】インプットの幅が狭い

いまの時代、単なる情報はどれだけでも得られる。

ニュースサイトのレコメンド・エンジンも精度が上がっているので、何もしないまま「知りたい情報」だけが流れ込んでくる状態をつくるのは、さほど難しいことではない。

しかし、そうしたフィルタを通じて届くのは、「あなたと似た誰か」が欲した情報でしかない。

逆説的に響くかもしれないが、「あなたのためにカスタマイズされた情報」に触れれば触れるほど、あなたの頭のなかは「ほかの誰か」と同一化していくのだ。

【自分モードを失う原因[3]】独自性が足りない

たとえばSNSの世界では、他者評価を可視化する「いいね!」のような機能がある。

すると、どうしても人々の投稿は、他人から称賛を得やすいものばかりに偏り、似たようなポストばかりが世の中に溢れることになる。

ニュースサイトのコメント欄などでは、本人は「自分の意見」のつもりで書いていても、結果的には「誰かが言っていそうな意見」に終始したものが多数観察される。

シェアやリツイートが手軽にできてしまうからこそ、インプットした情報にどのような加工を施すかについて、考えるタイミングがなくなっているのである。